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  • 木村凡 氏

    木村凡氏略歴
    京都大学農学部水産学科卒業後、京都大学農学研究科大学院(修士、博士課程)、農林水産省水産大学校製造学科助手、東京水産大学(現東京海洋大学)食品生産学科助教授などを経て、2012年より東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科教授、現在に至る。

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  • 農林水産省では農林水産物・食品の輸出額を平成31年(2019年)までに1兆円規模まで拡大する目標などを掲げるなど、輸出促進の方針を打ち出しています(平成23年の輸出実績は4511億円、平成27年は約7451億円)。そうした状況下、急速な発展を遂げている東南アジア(ベトナム、タイ、フィリピン)の食品業界の動向は、日本の食品企業にとって大きな関心事となっています。
    そこで、東南アジアで食品衛生セミナーや食品工場の衛生指導などの経験がある東京海洋大学の木村凡教授に、各国の衛生管理の現場で感じたことを伺いました。東南アジアの現状から、食品流通のグローバル化やHACCP制度化などへの対応を迫られている日本の食品業界が直面している課題が見えてきました。


  • 対米・対欧州への輸出ではリステリア対策が必須

     

    〔ベトナム〕
    ――まずはベトナムを訪問された時のことを教えてください。
    ベトナムで訪問した工場は、日本への輸出だけではなく、北米や欧州への輸出も前提に建てられたもので、非常に近代的な印象を受けました。最初から輸出を考慮しているので、海外のHACCPに関する規制にも対応できていました。海外の先進的な工場の事例なども参考にして、まったくの“ゼロベース”から立ち上げた工場で、「海外からの要求に柔軟に対応できる、グローバル対応ができる工場」という印象を受けました。
    一方で「そもそものビジネスモデルが日本と違う」ということも感じました。日本では無人化や省力化が進んでいる食品工場も珍しくありませんが、ベトナムの工場では(人件費が高くないことも影響していると思いますが)非常に多くの作業者が働いており、「海外が求める品質を人海戦術によって維持している」という印象を受けました。ただし、将来的に国が発展して人件費も高くなってきたら、こうした人海戦術は難しくなってくると思います。そうなった時には、ベトナムの工場も無人化・省力化が進んでいくのではないでしょうか。

     

    〔タイ〕
    ――タイを訪問した時のことを教えてください。
    タイで訪問した工場も対米・対欧州に輸出するために衛生管理を徹底していましたが、特に印象的だったのは「リステリア対策(リステリア・モノサイトゲネス対策)に非常に力を入れている」という点でした。日本の水産練り製品ではリステリアの基準はありませんが、対米・対欧州にRTE食品(ready to eat、そのまま喫食する食品)を輸出する際には、リステリア対策は避けては通れない、必須の課題です。この工場のマネージャーは「製品からリステリアが検出されたことはない。今は環境からの排除を目指している」と話していました。その方針の下、「水産練り製品でここまでの衛生管理は必要なのか?」と思うくらい、工場の至るところで洗浄を徹底していました。

    ――リステリア食中毒やリステリア対策に対する認識は、日本と欧米では大きな違いが見られます。
    日本ではリステリアによる食中毒のアウトブレイクは平成13年に北海道で発生した1例(原因食品はナチュラルチーズ)だけですが、「食中毒が起きていないのではなく、食中毒の原因菌として特定されていないだけ」と考えるべきでしょう。実際、リステリアによる食品汚染は欧米と変わらないレベルで起きていますし、感染症の患者も多数報告されています。
    リステリア対策については「今やグローバルな問題になっている」という状況を認識しておく必要があります。そうしなければ、もしかしたら近い将来、「日本ではRTE食品のリステリア対策がとられていない。日本よりもタイから輸入した方が安全だ」と考える国が出てくるかもしれません。

    ――現地の工場で衛生指導もされましたが、課題や問題点として気づいた点はありましたか。
    タイの工場では、工場全体でリステリア対策を徹底している一方、「最終製品が入ったカゴが、床からの水跳ねの可能性がある高さに置かれている」「最終製品の入ったカゴを持つ人の手袋が工場の各所に不注意に触れている」といったように、「二次汚染が起きる可能性があることまで考えられているだろうか?」と思う場面がありました。「なぜこのタイミングで手洗いや着替えをするのか?」といったような、一つひとつの作業やマニュアルの「本当の意味」までは十分に伝わっておらず、「マニュアルで決められているから、その通りに作業をしている」という雰囲気があるように感じました。
    衛生管理で大事なことは「微生物の二次汚染がどこで起こる可能性があり、いかにその可能性を防除するか?」「その二次汚染が、最終製品にどのような影響をもたらすか?」をきちんと理解することです。「実際に起こり得るリアルなリスク」を防除するマニュアルを作成し、そのマニュアルの意図を浸透させる教育が大切です。細かな作業までマニュアル化することは否定しませんが、「自分たちの作業にどのような意味があるのか?」ということを理解していなければ、製品に重大な影響を及ぼす二次汚染を見逃してしまうかもしれません。このことはHACCPが制度化される日本の食品施設にも共通して言えることではないでしょうか。

    • セミナーの様子(ベトナム)
    • セミナーの様子(タイ)
    • セミナーの様子(フィリピン)

     

    木村教授による各国でのセミナーの様子(左からベトナム、タイ、フィリピン)。
    セミナーの他、水産加工施設の視察、木村教授による工場の衛生指導なども行われました。


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