• 日本ハム食品株式会社
    関東プラント 品質保証部
    部長 亀田幸雄氏

  • 日本ハム食品株式会社

webLoaded = "false"
  • 亀田幸雄氏

    講演を行う亀田幸雄氏

  • セミナー会場の様子(東京会場)

    セミナー会場の様子(東京会場)

webLoaded = "false"
  • スリーエム ジャパン株式会社は2~3月にかけて東京、名古屋、大阪の3カ所で食品企業を対象としたセミナー「『変化する食品衛生管理』と『人手不足』への対応」を開催しました。
     セミナーでは、日本ハム食品株式会社 関東プラント 品質保証部 部長 亀田幸雄様に最近の食品企業の課題である「人手不足」や「働き方改革」への対応などを考慮した品質保証業務の改善や効率化に向けた取り組みについてご紹介いただきました。
     ニッポンハムグループは世界19の国・地域に590拠点を展開しており、グループ会社は92社(国内60、海外32)、従業員数は29,679名(国内22,863名、海外6,816名)です。売上構成は食肉が56.0%、加工食品が19.0%、ハム・ソーセージが11.7%を占めています(2017年3月31日現在)。
    亀田様が所属する日本ハム食品株式会社は関東プラント(茨城県常総市)、桑名プラント(三重県桑名郡)および関西プラント(兵庫県小野市)の3工場を運営しており、そのうち関東プラントで生産する商品は6割がコンシューマー商品(チキンナゲット、ハンバーグ、ピザなど)、4割が業務用商品(ハンバーグパティ、メンチカツなど)です。

    日本ハム食品株式会社 関東プラントの外観
    関東プラントの外観。工場は2006年にISO 14001、2014年にISO 9001を取得。今後はISO 22000やFSSC 22000の認証取得に取り組んでいる。

    亀田様の講演内容の要旨を以下よりご紹介します。


webLoaded = "false" Loadclientside=No

品質保証部門が抱える昨今の課題
~人材の確保、迅速かつ的確な顧客対応/消費者対応が求められる~

昨今の社会全体を取り巻く環境を見ると、企業における人材の流動化(勤続年数が短縮する傾向)、平均年齢の高齢化、大都市への人口集中などの問題が指摘されています。そのため、弊社としても人員不足、特に「次世代を担える人材」の確保に苦慮している状況があります。
 また、食品業界を取り巻く環境を見ると、価格競争が続く一方、消費者の安全性を求める志向、調理の簡便性を求める志向などは高まっており、顧客からの要求は高度化・スピード化の様相を呈しています。さらに加えてSNSなどの情報ツールの飛躍的な発展に伴い、これまで以上に迅速かつ的確な顧客対応、消費者対応ができる体制作りも求められています。
 こうした背景から、当社の品質保証部門では、検査体制の強化(検査数・検体数の増加、タイムリーかつ迅速な結果判定など)が強く求められるようになっています。


webLoaded = "false"
  • ニッポンハムグループの品質保証体制と人材育成システム
    ~「次世代を育成する人材」を育成する~

    ニッポンハムグループの品質保証部門は「日本ハム品質保証規程」に則った活動を展開しています。また、マネジメントシステムについては(これまではISO 9001をベースにしていましたが)ISO 22000やFSSC 22000をベースとした管理体制に移行しています。
     品質管理活動においては「従業員一人ひとりが品質を考える」という姿勢を重視していることから、「人財育成」に注力しています。人財育成システムの一例として、3段階でステップアップを図る教育体制を運用しています(図1参照)。このシステムでは、はじめに「ステップ1」として全従業員を対象としたeラーニングを利用した教育を行い、8分野(異物、微生物、アレルゲン、食品衛生、洗浄など)に関する知識を習得してもらいます。次いで、ステップ1を修了した者の一部が、「ステップ2」として異物や微生物検査、成分分析に関する基礎集合研修を受けます。さらに、ステップ2を修了した者の一部が、「ステップ3」の専門技術研修を受けます。ステップ3を修了して認定試験に合格した人には、「異物検査機器専門家」や「微生物検査技術専門家」などの社内資格が授与されます。
     この育成システムは、単に専門家を育てるだけではなく、「次世代を育成する人財」を育成するという目的があります。社内資格を持った専門家は、社内研修の講師を務めたり、各事業所で技術指導や新規技術の取組など、様々な場面で活躍しています。

    ニッポンハムでの品質に関わる取り組み:人財育成の仕組み(例)
    図1 ニッポンハムでの品質に関わる取り組み:人財育成の仕組み(例)


webLoaded = "false" Loadclientside=No

関東プラントにおける品質保証体制の改善
~多能工化による体制の安定化~

関東プラントでは検査体制の見直しを図っているところです。その一環として、検査の品目・頻度の見直しなどを図りました。これは、検査体制を見直した時に「何のために、この検査を行っているのか理解していない」「慣習として検査をしている」といった状況があることに気づいたからです。また、検査機器の更新も積極的に進めています。
 検査担当者についてはジョブローテーションを採用しています。品質保証部門では多種多様な検査を行っていますが、その中には「特殊な知識や技術を必要とする検査」もあります。そうした検査では「担当者に任せっきりになってしまい、その担当者がいなければ検査ができない」という状況に陥るリスクがあります。この状況を改善するために、「1人で2役も3役もこなせる能力を身につける必要がある」と考え、ジョブローテーションを採用しました。現在、当社では「微生物検査も理化学検査もできる、衛生チェックもできる」といった“多能工化”を積極的に推進しています。はじめのうちはジョブローテーションに抵抗感を示す人もいましたが、「なぜジョブローテーションが必要なのか?」を根気強く説明して回りました。
 ジョブローテーションの進め方ですが、OJT(実地訓練)を中心にすると、どうしても時間がかかってしまいます。また、文書化された(絵と文字の)マニュアルでは「マニュアルの通りにやってみたが、同じようにできない」「絵と文字のつながりがわからない」という不満の声が上がることもあります。そこで動画マニュアルを作成しました(最近は動画撮影やテロップ作成は簡単にできます)。動画を見れば、教育担当者がいなくても学習できますし、「教える人によって内容やニュアンスが違う」という状況も起きません。動画を使うことで、外国人従業員への教育・訓練も進めやすくなりました。
 掲示物も活用していますが、掲示物をたくさん貼ってしまうと、結果として「どれが大切な掲示物かわからない」という状況に陥るかもしれません。そこで最近はサイネージ(デジタルディスプレイ)も活用して動画やアニメーションなどを交えた情報周知・教育ツールを作成しています。
 また、例えば資格の取得を奨励するなど(例えばISO内部監査員の資格など)、従業員のモチベーションが向上するような働きかけもしています。


webLoaded = "false" Loadclientside=No

微生物の培養検査の問題点

食品工場では、抜き取り検査や出荷検査、環境の拭き取り検査など、様々な検査が行われています。検査結果が基準値を逸脱した場合は、出荷禁止や現場の是正・指導など、必要な対応策を速やかに実施しなければなりません。「迅速に検査結果がわかる」ということは、品質保証部門にとって極めて重要なことです。
 しかし、製品によっては、出荷検査の結果が出る前に出荷する場合もあります(例えば生鮮食肉のような、リードタイムが短い、原料や製品の在庫を持つことができない製品など)。そうした場合、出荷後に出荷検査の結果が出てきて、「菌数が自主基準値を逸脱していた」とわかる場合もあります。原料の受入れ検査も同様です。受入れ検査の結果で「基準値を逸脱している」とわかった時には、すでに原料が使用されている(使用前では菌数がわからない)という場合もあります。つまり、「原料や商品を止めるための先手を打つことができていない」という悩みがあるのです。
 そのため、品質保証部門は休日も検査のために出勤しています。関東プラントの検査室では8人で、1日200~300検体(工場稼働日)を取り扱っています。検査室の稼働日数は年間363日(12月31日と1月1日を除く)という状況です。昨今は「働き方改革」など総労働時間の短縮も求められています。何とかして検査の負担を軽減する方策が必要でした。そこで、簡便・迅速な微生物検査法として、「3M™ ペトリフィルム™ 培地」の導入を検討することにしました。
 その他にも、「製造ラインで抜き取り検査やラインの拭き取り検査、浮遊菌の検査を実施しているが、製造部門へ丁寧に指導する時間がない」「洗浄・殺菌方法を検証する時間の確保が難しい」といった悩みも抱えていました。ペトリフィルム™培地の導入が、こうした悩みの解決につながるのではないかと期待しました。


webLoaded = "false"
  • 3M™ ペトリフィルム™ 培地の導入による働き方改革
    ~「人件費の削減」、「培養結果の測定作業に伴う肉体的負担の軽減」などにつながる~

    標準寒天培地を用いた一般生菌の検査では、結果判定までに48時間かかります。しかし、3M™ ペトリフィルム™ 生菌数迅速測定用プレート「RACプレート」を導入したところ、結果判定が24時間で済むようになり、以前よりも1日短縮できました。つまり、検査結果に問題(例えば基準値の逸脱)があっても、従来より1日早く結果がわかるので、(短縮された時間を)事後対応に充てることができるようになりました(図2参照)。
     菌数が非常に多い食品(例えば生の商品や原料肉など)の検査では、一般生菌数の測定に時間がかかっていました。一例を挙げると、以前は標準寒天培地(シャーレ)の測定に65分かかっていたところが、ペトリフィルム™ 培地と3M™ ペトリフィルム™ プレートリーダー(ペトリフィルム™ 培地 上のコロニーを自動的に計数する装置)を導入したことにより、測定は9分となり、56分の短縮になりました(図3参照)。ペトリフィルム™ 培地とプレートリーダーの導入以前は、コロニーの数が多いほど測定に時間がかかっていましたが(標準寒天培地1枚あたり約1~3分)、導入後はコロニー数に関係なくペトリフィルム™ 培地1枚あたり4秒程度で測定が終了します。
    加熱商品の菌数の測定は(菌叢が絞られるので)さらに容易になります。
    これらの結果、1日平均で約1時間の作業時間の短縮、年間で約35万円の人件費の削減につながりました。
     また、ペトリフィルム™ 培地は出来上がり培地なので、培地調製が不要です。そのため、緊急時(急な検査依頼があった時など)の対応がしやすくなりました。培地調製などの作業工数が減少したことは、作業時間の短縮、時間外労働の削減につながりました。その他、ペトリフィルム™ 培地の導入によって得られた効果としては、正確性の向上(誰でも簡単に測定できるので、人によるバラツキがなくなる)、測定作業に伴う肉体的な負担(眼精疲労、肩こりなど)の軽減なども挙げられます。廃棄物量の削減、滅菌作業の減少、省スペース化の実現などの効果もあらわれています。
     なお、ペトリフィルム™ 培地の導入に際しては、標準寒天培地を用いた検査との比較(培地性能の検証)を行いました。現在も標準寒天培地とペトリフィルム™ は併用しており、互いの数値を比較することで、「ペトリフィルム™ 培地の検査が正しく行われているか?」ということを確認しています。

    3M™ ペトリフィルム™ 培地の導入効果 (培養時間の短縮)
    図2 3M™ ペトリフィルム™ 培地の導入効果 (培養時間の短縮)

    ペトリフィルム™ 培地とプレートリーダーの導入効果(測定に要する時間の短縮)
    図3 ペトリフィルム™ 培地とプレートリーダーの導入効果(測定に要する時間の短縮)


webLoaded = "false" Loadclientside=No

「感動を与える“攻め”の品質管理」の時代へ
~現状を大胆に変える勇気を持つ~

 先述の通り、検査の数や頻度は増加する傾向にあります。その一方で、品質保証に投入できる資源は限られています。限られた資源を有効活用するには、管理者が(既存のシステムや、今までやってきた取り組みを)「現状を大胆に変える勇気」を持つことが求められます。
 品質保証部門における今後の課題の一つは「品質の課題を解決するための『時間』と『人財』」を作ること」であり、そのためには「新しい技術にチャレンジできる人財」を育てること」「専門家を育成する一方で、誰でも検査・判断できる体制を作ること」なども必要でしょう。「自動化」「AI化」なども、今後の品質保証体制を構築する上でキーワードになってくるでしょう。
 また、「品質保証」という言葉には、どうしても受け身のイメージがあります。しかし、これからの食品企業に求められるのは「お客様に感動を与える『攻め』の品質管理」です。「変える勇気」を持って、新しいチャレンジをすることは、将来的には働きやすい環境の実現、優秀な人材の流出阻止などにもつながっていくはずです。


webLoaded = "false" Loadclientside=No

働き方改革の第一歩として「限られた資源(予算・人材)で生産性を向上させる」という観点から本コラムが皆様の活動にお役立ていただけたら幸いです。

コラム一覧


webLoaded = "false"
webLoaded = "false"
Follow Us
地域を変更する
日本 - 日本語