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口頭発表・ポスター発表・特別セミナー
カンピロバクター関連の発表が活発、制御・管理・対策に関する最新知見が充実

 会場では、114題の口頭発表、50題のポスター発表のうち口頭発表7題、ポスター発表8題がカンピロバクター関連の発表であり、関心の高さが窺えました。カンピロバクターは例年、食中毒の事件数では1位または2位を占める病因物質で、鶏肉を原因食品とする食中毒、調理従事者や調理器具などを介した二次汚染による食中毒が多数発生しています。また、カンピロバクター感染症の発症者に関しては、「ギラン・バレー症候群」という重篤な難病を発症するリスクも指摘されていることから、効果的な対策の確立が急がれる公衆衛生上の重要課題となっています。
 カンピロバクター関連の口頭発表・ポスター発表としては、試験法や基礎的な情報や対策をはじめ、生食用食鳥肉と加熱用食鳥肉における汚染状況調査や、その結果に基づいた製造・調理環境における交差汚染対策(使用器具やラインなどの洗浄)に関する注意喚起、市販鶏肉のドリップシートにおける検出状況調査や、その結果に基づくドリップシートの取り扱いに関する注意喚起、あるいは調理環境におけるカンピロバクター汚染の実態調査結果などが報告されました。 
 また、高圧処理を用いた鶏肉の殺菌効果の検証、水銀ランプによるUVA-LEDを用いた調理器具などの照射殺菌の効果検証など、新規殺菌技術の開発に関する研究、MALDI-TOF MSやモバイルリアルタイムPCR装置を用いたカンピロバクターの迅速検出法の確立に関する発表にも注目が集まりました。
 その他にも、食鳥処理場において、と体皮膚にカンピロバクター菌が付着するメカニズムに関する研究が報告され、「と体皮膚と菌体の間に特異的な付着機序が存在する」という可能性が示唆されました。今後、新たな概念のカンピロバクター対策を開発する上で、続報に期待が持たれます。

カンピロバクター対策の課題は、患者数や汚染実態を正確に把握するシステムの構築
 内閣府食品安全委員会は、2006年10月に「食品健康影響評価のためのリスクプロファイル:鶏肉を主とする畜産物中のカンピロバクター・ジェジュニ/コリ」、2009年6月に「微生物・ウイルス評価書 鶏肉中のカンピロバクター・ジェジュニ/コリ」を公表しました。しかしながら、依然として食中毒が効果的に削減できていない現状があることから、2009年以降の知見も含めて、新たにリスクプロファイルを更新。今年5月に「食品健康影響評価のためのリスクプロファイル~鶏肉におけるCampylobacter jejuni/coli~」を公表しました。
 そこで今回の学会では、食品安全委員会 委員長代理の山本茂貴先生が、新しいリスクプロファイルの概要について解説する特別セミナーを行いました。カンピロバクター食中毒に対する的確な対策を講じるには、まずは本菌による感染症の発生状況や、生産農場(養鶏場など)における本菌の汚染実態などを、正確に把握する必要があります。しかしながら、現状ではまだ十分なデータが得られているとはいえません。本セミナーでは、今後の課題として「カンピロバクター感染症の正確な患者数を把握するためのシステム構築」「フードチェーン(生産段階、食鳥処理場、流通段階など)を一貫した継続的かつ定量的な汚染状態の把握(モニタリング)」などが指摘されました。

シンポジウム
O157やノロウイルスの広域食中毒の反省から、迅速な原因究明・事後対応の仕組みを構築中
 昨年は、ポテトサラダによる腸管出血性大腸菌O157食中毒、刻み海苔によるノロウイルス食中毒が発生するなど、複数の地域にまたがる食中毒が社会的問題となりました。そうした状況を受けて、今年6月の食品衛生法の一部改正では「広域食中毒発生時における自治体間の連携・協力体制の強化や広域連携協議会の設置」が盛り込まれ、当面の課題として「地方自治体間、国と地方自治体間の情報共有」「国民への情報提供」「食中毒の原因となる細菌の遺伝子検査手法の統一」などが挙げられています。現在、行政では迅速な原因究明や効果的な事後対応の仕組みを構築しているところですが、今年6月に発生したサンチュを原因とするO157食中毒では、迅速な原因究明や事後対応がなされたと評価されています。

教育講演
ブランチング(マイルドな加熱)による生鮮青果物の微生物制御の可能性が検討段階に
 近年、使い勝手の良いカット野菜やサラダ、カットフルーツなどの需要が高まっています。その一方で、葉物野菜(レタス、ホウレンソウなど)、トマトやスプラウトなど、生鮮野菜を非加熱で喫食する場合は、原材料由来のサルモネラやO157などによる汚染リスクを想定しておく必要があります。次亜塩素酸ナトリウムなど化学物質による処理は、野菜や果実の表面に付着した微生物を制御する上で有効ですが、反面、においが気になるなど品質面での課題も指摘されています。
 そこで現在、ブランチングを病原微生物の制御方法として活用する可能性について、検討が進められています。“ブランチング”とは青果物中の酵素失活や殺菌を目的とするマイルドな加熱処理のことで、本来は加工中や貯蔵中の品質劣化の抑制、褐変防止や食感改善などの効果を期待して用いられていますが、微生物制御の面でも期待が持たれています。
 今回の教育講演では、ブランチング処理が生鮮野菜などの品質面(食感など)と食品安全(微生物制御)に及ぼす影響の両面について、岐阜大学 応用生物科学部の今泉鉄平先生による講義が行われました。

特別企画
病原微生物だけでなく、乳酸菌など健康増進の微生物についてもフォーカス
 特別企画では、はじめに慶応義塾大学 先端生命科学研究所の福田真嗣先生が、食習慣の改善などによる腸内微生物生態系(腸内エコシステム)の改善、健康維持・疾患予防・治療基盤の創出に取り組む同大学の研究の近況を報告しました。腸内における微生物の生態系や挙動はまだまだ不明な点が多いですが、さまざまな解析技術を用いることで、腸内細菌叢由来の代謝物質が、生体の恒常性維持に重要な役割があることなどが解明されつつあり、今後の研究に期待が持たれています。
 また、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の大池秀明先生は加齢性難聴(耳の老化)の予防に乳酸菌がもたらす効果について、明治の小林杏輔先生は腸管バリア機能の増強にヨーグルトがもたらす効果について、ヤクルト本社の髙木陽光先生が健康寿命の延伸にプロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌など宿主に有益な効果を与える生きた微生物)がもたらす可能性に関する臨床研究の現状について、奈良女子大学の小村智美先生が線虫モデルを用いた乳酸菌の長寿効果に関する研究の現状について講演するなど、有用微生物がヒトの健康増進、今後の長寿社会の実現にもたらす可能性について理解を深める場となりました。


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