サルモネラ属菌は、グラム陰性の桿菌です。大腸菌や赤痢菌のように、腸内細菌群に存在する細菌の1種です。アメリカの科学者であるダニエル・エルマー・サーモンによって発見されて以来125年以上病気を引き起こす菌として知られています。
サルモネラ属菌はもっとも注意すべき食中毒菌の一つです。この菌が引き起こす病気であるサルモネラ症は、世界的に広く発症例が報告されています。
サルモネラ属には2,500以上の異なる血清型が含まれています。公衆衛生の観点から最も懸念されているのはSalmonella entericaです。これらの微生物は、生肉、鶏肉、卵、牛乳および乳製品、魚および魚介類、スパイス(ココア、チョコレート)、およびソース、サラダドレッシング、ケーキミックス、クリーム入りデザートなどの食品に関連しています。
サルモネラ属菌は自然界に広く分布しており、人間だけでなく動物(カメや他の爬虫類などのペットにいることが知られています)にも生息しています。池の水、灌漑用水、土壌、昆虫、工場設備、手指など、さらに消費者レベルでは台所や調理器具を汚染することで知られています。
サルモネラ属菌は2種類の症状を引き起こし、その合計罹患率は10万人あたり15.2人で、米国では年間平均380人が死亡すると推定されます。1つ目は、嘔吐、下痢、けいれん、発熱などの胃腸に関連する症状です。症状は通常2~3日間続き、1週間以内に次第に治まります。これらの症状は通常、健康な人では1週間以内に治りますが、免疫不全の人の場合は、サルモネラ属菌が他の臓器に広がり、より深刻な病気を引き起こす可能性があります。米国疾病管理予防センター(CDC)の推定によれば、米国では毎年、このようなサルモネラ症の症例が100万例以上、また約23,000例のサルモネラ症による入院例が発生しており、さらに未報告や未診断の症例もあると想定されています。
2つ目の病気ははチフス性疾患(腸チフス・パラチフス)で、多くの症状はサルモネラ症と同じですが、高熱、頭痛、意識障害を引き起こし、発疹が見られる時もあります。この症状は、通常は食品からではなく、下水で汚染された飲料水や、下水による汚染水から灌漑された農作物から生じるもので、1つ目の症状よりもはるかに重篤です。2014年に公開された推定では、世界中で年間約2,100万例の症例と22万2,000人のチフス性疾患による死亡例が発生しています。米国では毎年約400例が報告されており、約6,000人が亡くなっていることが推定されます。抗生物質を使用する前の死亡率は20%でしたが、抗生物質および補助療法(治癒の可能性を高めるために一次治療の実施後に行われる治療のこと)を用いることで、死亡率が1〜2%まで減少しました。
多くのサルモネラ症の症例は、生または調理が不十分な鶏肉・鶏肉製品を消費するために起こりますが、最近では、新鮮な農産物やスパイスなどの低水分食品も集団感染の原因となっています。
集団感染により、多くの人が入院する可能性があります。例えば、ブランドの鶏に関連したSalmonella Heidelbergの集団感染は、全米の29州とプエルトリコで600人以上が入院する事態となりました。原因となった養鶏業者は4万ポンド以上の鶏肉製品を回収しましたが、改善した管理措置を施し、汚染を減らすまで回収は続きました。
米国では多くの消費者は、食物からサルモネラ属菌を洗い流すのが難しいという事実を認識しています。そして、加熱調理、手洗い、調理済みの食品と生の食材を分けて保管すること、および適切な冷蔵保存が汚染を防ぐポイントです。二次汚染は「農場から食卓まで」のあらゆる工程において、様々な汚染源(汚染した食材、人、器具、動物等)との接触を介して発生します。
米国農務省食品安全検査局(FSIS)は、家禽と卵(および肉)の取り扱いと微生物学的モニタリングのプロセス管理を監督する機関であり、サルモネラ属菌の抑制に努めている団体です。2016年、FSISは年間50,000例の病気を防ぐための新しい基準を発表し、それ以来、その他の国は調和するための措置を講じてきました。
これらの取り組みにより、サルモネラ属菌をより簡単かつ効果的に管理できることが求められています。サルモネラ属菌検査の歴史の中で、長期間にわたって多くの食品で検出法が開発されてきました。従来の方法はサンプルの収集、増殖培地への画線、培養を行う必要があり、通常、結果を得るのに4〜6日かかります。
これらを改善するために、食品事業者は、分子生物学に基づいた高度なテクノロジーを取り入れています。サンプルに含まれる病原菌の特定の遺伝子を増幅および検出することで、その存在をモニターできます。3M™ 病原菌検出アッセイ2-サルモネラ菌用および、3M™ 病原菌検出システムは第3者認証を受けた迅速簡便法です。