株式会社生活品質科学研究所様

株式会社生活品質科学研究所様

※本事例は、月刊HACCP2018年6月号に掲載された記事を編集したものになります。

※本事例は、月刊HACCP2018年6月号に掲載された記事を編集したものになります。

  •  株式会社生活品質科学研究所様

    イオンのPB商品の安全・安心を
    正確・迅速・簡便な微生物検査がサポート!

    ~株式会社生活品質科学研究所における
    「3M™ 病原菌自動検出システム」の効果的な活用事例~

  •  RIQLの黒瀬直孝氏、小林宏行氏、原千穂氏
    左からRIQLの黒瀬直孝氏、小林宏行氏、原千穂氏

    イオングループのプライベートブランド(PB)商品や、イオングループの店舗で販売されるインストア商品(弁当、総菜類)などの微生物検査や理化学検査などを主業務とする株式会社生活品質科学研究所(通称「RIQL(リクル)」)では、微生物検査業務の効率化・迅速化、信頼性のさらなる向上などの観点から、常に「より簡便・迅速、高信頼の検査法」の導入について模索・検討を行っている。
    同社は、先ごろ「DNA等温増幅(LAMP法)」と「生物発光検出」を組み合わせた、簡便・迅速な食中毒菌の検査法「3M™ 病原菌自動検出システム」(以下「MDS法」)を採用。サルモネラ属菌とリステリア・モノサイトゲネスを対象とした自主検査(スクリーニング検査)に用いるとともに、同システムを用いた受託検査サービスも開始した。本稿では、同社がMDS法を導入した目的や経緯、導入効果などについてうかがった。(編集部)

    株式会社生活品質科学研究所(本社所在地・千葉県千葉市美浜区、小松幸代代表取締役社長、http://www.riql.jp/、以下「RIQL( リクル)」(Research Institute for Quality Living CO.,LTD.))では、イオングループが販売する食品・衣料品・住居余暇などの関連商品の開発支援や安 全性・機能性の検査・分析、品質確認、店舗や工場の点検・指導などを主業務としている。
    そのうち食品検査に関しては、主にイオングループのプライベートブランド(PB)商品や、イオングループの店舗で販売されるインストア商品(弁当、総菜類)などの微生物検査や理化学検査を行っており、RIQL中央研究所の微生物検査室では年間約17,000検体の検査を実施している。
    微生物検査では、基本的には食品衛生法で定められた公定法を用いている(公定法が存在しない場合は「食品衛生検査指針(微生物編)」に収載された検査法を用いる)が、その一方で、検査業務の効率化・迅速化、信頼性のさらなる向上などの観点から、常に「より簡便・迅速、高信頼の検査法」の導入について模索・検討を行っている。
    RIQLでは、先ごろ2種類の病原微生物(サルモネラ属菌とリステリア・モノサイトゲネス)に関して、「3M™ 病原菌自動検出システム」(以下「MDS法」、MDS=Molecular Detection System、3M製、本稿末尾の参考資料参照)を正式に採用。自主検査(スクリーニング検査)に用いるとともに、同システムを用いた受託検査サービスも開始した。

本稿では、主席研究員の黒瀬直孝氏、品質検査本部 中央研究所 食品検査部の小林宏行氏(微生物検査 兼 生化学検査グループリーダー)、ならびに同部の原千穂氏にMDS法を導入した目的や経緯、導入後の効果などについてうかがった。

――はじめにMDS法を導入した目的や経緯についてうかがいます。

【小林】 イオングループではお客様へ安全な食品をお届けするために、一部の輸入食品では行政検査だけでなく、自主検査も実施しています。この自主検査に求められる要素としては、信頼性が高いこと、迅速に結果が得られることなどが重要視されます。
以前から寒天培地を用いた培養法による自主検査は行っていました。しかしながら、培養法には「培地調製に時間や手間がかかる」「結果が得られるまでに数日かかる」「検査の手技やコロニーの観察など『熟練の技術』が必要になる」などの課題があります。また、微生物や検査に関する専門的な知識や教育も必要です。そうした背景から、信頼性が高く、迅速で簡便な検査ができる体制づくりなどが求められ、このたびサルモネラ属菌とリステリア・モノサイトゲネスの検査についてMDS法を採用することにしました。

――「迅速性」がもたらすメリットについて。

【黒瀬】 「少しでも早く検査結果を得たい」という場面に備えておくのは極めて重要なことです。一例を挙げると、お客さまからお申し出があった際には、できるだけ早く検査結果を報告してお客さまに安心していただけるように、常に迅速に、かつ正確に結果を出せる検査方法、検査体制を整えておくことが当社にとって必要なのです。
また、商品によっては検査結果がわかるまで流通させない(倉庫などで留め置く)場合もあります。検査結果が迅速にわかれば、その分だけ保管 のスペースやコストの軽減にもつながります。

――「簡便性」という観点では、「熟練した検査員でなくても、誰が検査を担当しても同じように検査ができる」というメリットが期待できます。

【小林】例えば、MDS法の試薬はすべて調製済みなので、培養法のように試薬や培地などを調製する時間と手間が軽減されるため、検査の準備に要する時間が大幅に短縮できます。また、例えば土日や祝日などに緊急の検査が必要になった場合でも、(試薬さえストックしてあれば)すぐに検査に取りかかることができます。
【原】 検査の手順は、増菌培養をしてから2回のピペット操作をすれば終了するので、検査の過程でミスをする可能性は極めて低いと思います(図参照)。結果の判定も装置が自動的に行うので、検査担当者の主観や裁量が介在しません(培養法では検査担当者がコロニーを観察して結果判定をする)。
また、MDS法は「使い勝手の良さ」という点で、さまざまな工夫が凝らされていると感じます。例えばチーズ関連の商品などでは「サルモネラとリステリアの両方の検査結果を出してください」と求められることもありますが、MDS法では増菌培養後にこれら2菌種を同時に検査できるため作業時間が短縮されます。さらにいえば、増菌培養後のプロトコルは異なる菌種であっても共通しているため、操作時のミスが起こりくく、スムーズな検査ができます。

――イオングループの場合、海外の基準や規格を遵守しているかどうかの検査も必要なので、検査法には「国際市場における信頼性」も不可欠な要素です(別項参照)。

【小林】MDS法は、日本は検疫所の検査で採用される※1など、信頼性の高い検査法です。また、AOAC OMA、AFNORの認証を取得しているため、国際的な食品流通の場面では「ISO法の代替法」として信頼されています。
※1 厚生労働省、事務連絡「A.O.A.C.(OMA)の認証を受けた簡易測定装置による試験法」(平成28年10月7日)

――「正確」「迅速」な検査が、「簡便」という特長によって維持されている、という状況があるのですね。

  • 簡便かつ迅速に、正確な検査を実施できる

    簡便かつ迅速に、正確な検査を実施できる。操作方法が簡便なので、検査担当者の教育時間の短縮、検査技術の確実な継承などにも効果が期待される。

  • 測定装置はL 292㎜×W 218㎜×H 96㎜(重量4.3㎏)とコンパクトなサイズ

    測定装置はL 292㎜×W 218㎜×H 96㎜(重量4.3㎏)とコンパクトなサイズ。検査室のスペースが限られている場合でも設置可能。

  • 「使い勝手の良さ」はMDS法のコンセプトの一つである

    検査結果を解析するパソコン画面は、さまざまな情報が一目で把握できるようにデザインされている。「使い勝手の良さ」はMDS法のコンセプトの一つである。

商品開発でも迅速検査が活躍、検査受託のサービスも開始

――製品検査の他にも、MDS法の3つの特長(正確・迅速・簡便)が活かされた場面はありますか。

【黒瀬】 例えば、海外で起きた食中毒関連の情報を得た際に「当社の関連商品で同種の問題が起きていないか?」といった緊急の調査を実施することもあります。あるいは、そうした緊急調査を社外から依頼されて、検体数が急増することもあります。検査員の人数は限られていますが、そのような検体数が増加する状況になっても、正確な結果を迅速に出し続けることが可能になると思います。MDS法を効果的に運用することで「検査需要の変動に強い検査体制を構築する」「検査員を増やさず、検査のキャパシティを上げる」ということにつながっていると思います。
また、研究開発でも「正確・迅速・簡便」というMDS法の長所は活かされています。新製品の研究開発において、原材料や試作品などの検査結 果が早くわかれば、それだけ(検査結果をフィードバックした上での)試作も高回転で行うことが可能となります。
ちなみに、当研究所(中央研究所)は、「単に検査を行う組織」ということではなく、検査結果を研究開発や品質管理にもフィードバックするな.
ど、「イオングループの研究開発・品質管理の中枢的な役割」を担っている」という自負心を持って、日々の業務に携わっています。「イオンの商品のための中央研究所」としての使命を果たす上で、「正確な検査結果を、迅速に出し続けること」は重要なポイントになります。

MDS法の操作手順

図  MDS法の操作手順(図はサルモネラの検査手順)。
検査担当者は、増菌培養後、2回のピペット操作を行うだけで、正確かつ信頼性の高い検査が可能。試薬調製など
の作業が不要で、検査中のクロスコンタミネーションのリスクは極めて低いことも大きな特徴の一つ。

別項  妥当性確認された検査法を採用する意義と、HACCP制度化における自主検査の位置づけ

国際的には、「妥当性確認された簡便・迅速な微生物検査法」という考え方はすでに浸透している。欧米には検査法(検査キット)の妥当性確認を行う第三者機関も存在する(AOAC INTL、MicroVal、AFNOR、NordVal)。これらの機関ではISO、FDA BAMなどの試験法を参照法とした検査法の妥当性確認を行っており、AOAC OMA※1、MicroVal、AFNOR、NordValの認証を受けた検査法は、欧米では、参照法の代替法として認められる。
現在、日本では将来的なHACCP制度化に向けた施策が展開されている。HACCP計画が適切に構築・運用されているかどうか工程管理や検証をする手段として、「微生物検査」は欠かすことができない重要な位置づけにある。食品企業では公定法や簡便・迅速な検査法など、さまざまな検査法を組み合わせることで、自社のHACCPや微生物制御の一層のレベルアップを図り、消費者への安全・安心な食品の提供に努めている。
ただし、公定法は、あくまでも国が定める規格基準に合致しているかどうかを判断するための検査法である。そのため、自主検査で「工程管理が適切に行われているか?」を確認する場合には、必ずしも公定法を用いる必要はない。そうした場面では、「妥当性確認(バリデーション)された簡便・迅速な微生物検査法」を用いることが、有効な選択肢の一つとなる※2。

※1 AOACによる妥当性確認は、OMA(Offi cial Methods of Analysis、公定分析法)とPTM(Performance Tested Methods、性能検証済み試験法)の2種類がある。OMAでは検証に加わる他の分析機関の数が12機関以上、PTMでは1機関のみとなる。
※2 スリーエムジャパン株式会社メルマガ、https://www.3mcompany.jp/3M/ja_JP/food-safety-jp/

――現在、MDS法を用いたリステリア・モノサイトゲネスの検査についてもISO 17025認定取得を目指しているとうかがいました(生菌数の検査についてはISO 17025認定を取得済み)。

【黒瀬】以前、プライベートブランド商品を輸出した際に「ISO 17025認定を取得した検査室で実施した検査結果を付けてください」と要求されたことがありました。今後、食品流通のグローバル化が活発になるにつれて、ISO 17025の必要性も高まってくるのではないでしょうか。
ちなみに、検査室の信頼性確保(精度管理)では検査担当者による結果のバラツキも確認しなければなりません。MDS法は(人手を介する作業が)ピペット作業だけなので、「専門的な能力」「個人の検査技量」の影響は少なく、検査担当者によるバラツキは出にくいと考えています。

――これから簡便・迅速な検査法の導入、あるいはMDS法の導入を検討している食品企業へ助言はありますか。

【小林】MDS法と培養法を比べると、(MDS法の方が)装置のイニシャルコスト、試薬のランニングコストなどは高くなります。しかし、培地調製の手間や時間は大幅に削減できますし、寒天培地への塗抹操作などの専門技術も不要になります。また、「使い勝手が良いキット」なので、技能習得に必要な訓練も少なくて済みます。コスト面で悩む方もいると思いますが、検査の省力化・効率化を考えている企業にとっては有効な選択肢の一つになると思います。
ただし、簡便・迅速な検査法を選択する際には「目的に合った検査法を選択する」という点も重要です。イオングループには「お客さま第一」という理念があります。その理念を実現するためには、「イオングループで取り扱う商品で何か問題が起きた際に、迅速かつ的確な対応をするための仕組みやシステム」が不可欠であると考えました。そして、そのためには「公定法による検査」と「妥当性確認を受けた簡便・迅速法による自主検査」を併用する必要があり、(弊社のサルモネラ属菌とリステリア・モノサイトゲネスの検査においては)MDS法が効果的かつ効率的である、と判断したということです。

――昨年12月末よりMDS法を用いたサルモネラ属菌とリステリア・モノサイトゲネスの検査受託のサービスを開始しました。

【黒瀬】まだ始めたばかりですが、ISO 17025認定を取得している当中央研究所で、AOAC OMAやAFNOR認証を取得した検査法を用いた受託検査サービスを行っています。ぜひ信頼してご依頼ください。

――イオングループでは、国際的な組織による妥当性確認された検査キットが有する3つの長所(正確・迅速・簡便)を活かすことが、製品の安全性確保だけではなく、病原微生物検査が関与するさまざまな経営課題の克服、さらには新サービスの提供などへとつながっていることがわかりました。本日はありがとうございました。

参考資料 食中毒菌を正確・迅速・簡便にスクリーニング検査「MDS法」
  • 3M™ 病原菌自動検出システム
    3M™ 病原菌自動検出システム

    MDS法は「DNA等温増幅(LAMP法)」と「生物発光検出」を組み合わせた、食中毒菌の簡便・迅速な検査システムである。

    測定原理は、複数のプライマーを用いてゲノムの異なる領域を認識し、BSTDNAポリメラーゼを用いて遺伝子物質を連続的かつ迅速に増幅する。標的DNAの像副反応の副産物であるピロリン酸イオン(PPI)およびアデノシン5'-O-ホスホ硫酸(APS)は、ATPスルフリラーゼによる酵素反応を介してATPに変換される。ATPはルシフェラーゼと反応して発光し、検出された光は標的菌DNAの存在を示す。増幅および検出を指数関数的増幅期に同時に連続的に行うため、結果がリアルタイムに得られ検査時間の短縮につながる。従来の公定法の場合、リステリア・モノサイトゲネスは定性試験で3日、定量試験で6日、サルモネラ属菌の定性試験では4 ~ 6日かかるが、MDS法であれば、いずれも2日で結果が得られる(図参照)。
    MDS法の主な特徴としては、①操作が簡単(前培養→アッセイセットアップ→等温増幅および測定の3ステップで検査が可能)、②迅速に結果が
    得られる、③装置が壊れにくい、④試薬がキット化されている、⑤高精度(100種類以上の菌株で検証済み)など。

従来の培養法とMDS法の検査時間の比較

                                        図    従来の培養法とMDS法の検査時間の比較

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