1992 年に居食屋「和民」を出店して以来、「“ありがとう”を集める企業」をモットーに飲食業、介護事業、宅食事業などを展開してきたワタミグループ様。 安全・安心でおいしい「食」を届けるために国際規格や独自のマネジメントシステムを導入・実践しているワタミグループ様では、品質保証の効率と精度の向上を目的に、2013 年から「3M™ ペトリフィルム™ 培地」を導入しています。
ワタミ株式会社
品質保証室 室長
本社所在地 | 〒144-0043 東京都大田区羽田一丁目1 番3 号 |
設立 | 1984 年4 月 |
従業員数 | 6,394 人(グループ計)(2014 年7月1 日現在) |
事業内容 | 外食事業、介護事業、宅食事業、農業、マーチャンダイジング事業、 環境事業を展開し、独自の6 次産業モデルを構築する。 |
URL | http://www.watami.co.jp/ |
「地球上で一番たくさんの‘‘ありがとう"を集めるグループになろう」をスローガンに、外食専業、介護事業、宅食事業、農業、環境専業などを展開するワタミグループ様。多様な事業、業態を通して、安全•安心でおいしい「食」の提供をめざすワタミグループ様では、2002年に農業に参入。また、同時期に第1号となる集中仕込みセンター「ワタミ手づくり厨房越谷センター」を開設。2008年にセンターを統括する「ワタミ手づくりマーチャンダイジング株式会社(統合により現ワタミ株式会社)」様を設立し、グループの外食店舗、介護施設、宅食の営業拠点などへ安全・安心な商品を迅速かつ衛生的に供給する体制を整備しました。
ワタミ株式会社様では、「バラエティ豊かで、常に変化し続けるメニューを支え、安全・安心な製品を安価で提供すること」を経営目的に掲げ、生産から仕入れ、品質・衛生管理、製造・加工、物流まで、全工程を国際規格や独自の品質管理基準に基づいて徹底して管理。安全・安心な製品を製造・出荷しています。現在(2016年11月時点)は、12カ所の生産拠点「ワタミ手づくり厨房」から、全国47都道府県で展開する18業態・484店舗のグループ外食店舗、有料老人ホームなどに商品を提供。宅食事業向けには、1日約23万食の宅配弁当を製造しています。
グループ各社においしく、安全・安心な商品を届けるために、欠かせないのが品質保証活動。ワタミグループ様では、各地のワタミ手づくり厨房内に衛生センターを設置し、品質保証室のスタッフが商品検査や原料の抜き取り検査、製造機械の衛生検査など、多岐にわたる微生物検査を実施しています。しかし最近は、グループの事業・業態の多角化にともない、製造する商品バリエーションが年々拡大。微生物管理に関する品質保証活動を迅速、確実に行なうためには、微生物検査の効率化が急務となっていました。
「検査に寒天培地を使用していた当時は、培地調製に時間がかかり、検査できる検体数が限られていたため、検査は完成した製品の主要4菌種を確認する微生物検査など、基本的な項目が中心でした。また、寒天培地による検査には対応にかかる時間や精度面の課題もありました」(品質保証室 池田忠則氏)
また、食品関連の事故が社会問題化する中、こうした事故を防止するフードセーフティの強化が課題のひとつに。さらに、食品の品質表示基準が見直され、一括表示の作成・変更に要する手間が増大したことにより、食品表示業務を効率的に行なえる体制の整備が必要になっていました。そこで、ワタミグループ様では、品質保証業務の新たな体制づくりに着手。先手を打って事故を予防する「攻めの品質保証」を実現するため、まずは検査方法の効率化に着手しました。
「フードセーフティは川下で網を張るより、川上に向けて行動していくほうが安全・安心を具現化できます。製品だけでなく原材料、その手前の生産環境までさかのぼってチェックし、微生物をコントロールすることができれば、より安全性を担保できます。ただし、こうした検査体制を実現するには効率を上げて検体数を増やさなければならない。そのためには、培地調製が不要な3M™ ペトリフィルム™ 培地が最適だと考えました」(池田氏)
品質保証室では、微生物検査が果たす役割、そのために重視すべき点、それぞれの検査方法の作業性、コスト、教育面などを改めて検討。培地調製が不要で作業時間の短縮が見込める3M™ ペトリフィルム™ 培地を、寒天培地に替わる検査方法として提案しました。
「日本には、食品衛生法に基づくいわゆる公定法の試験法があるが、食品事業者に求められるのはあくまで自主検査となります。公定法は、試験法が煩雑であり、自主検査として有効でない場合もあります。そこで、当社が行なう自主検査にどの程度の精度が必要であり、そこにどのくらい時間をかける必要があるのか。こういった点を精査し、ペトリフィルム™ 培地に変更することにより時間や人件費などを含めた経費をどの程度抑えられるのか、品質保証の精度向上にどう役立つかといった点をシミュレーションしました。そして、変更によるメリットが大きいという結果が得られたことから試験導入が決まりました」(池田氏)
ペトリフィルム™ 培地が試験導入されたのは、2013年9月。まずは日高センター(埼玉県)で、従来の寒天培地による検査とペトリフィルム™ 培地による検査を並行して行ない、その結果の差異を確認する比較試験が行なわれました。この時、ペトリフィルム™ 培地を初めて使用したスタッフからは、「コロニーが判定しやすい」「カウントしやすい」など、高い評価が得られたと言います。
「テスト期間中は、検体の半分をペトリフィルム™ 培地、残りの半分を寒天培地で検査して結果に差がないことを確認しました。私自身、初めて使用したのですが、ペトリフィルム™ 培地はコロニーの形・色がはっきり見えてわかりやすいと感じました。また、『寒天培地よりコロニー数がカウントしやすい』と検査スタッフにも好評でした。3週間のテスト期間を終え、ペトリフィルム™ 培地に完全に切り替えた後は、『コロニーかどうかわからないから確認してほしい』と声をかけられることがほとんどなくなり、検査作業をスムーズに行なえるようになりました」(検査ご担当者)
ペトリフィルム™ 大腸菌群数測定用CCプレートによる培養例(左図)とデソキシコレート寒天培地による培養例(右図)。ペトリフィルム™ 大腸菌群数測定用CCプレートは気泡を伴ってコロニーが生育するため判定が容易です。
シャーレに比べ廃棄物を大幅に削減することができます。
「シャーレに比べると保管場所も作業スペースも小さくてすみますし、インキュベーターの使用面積も10分の1程度に。検査後の廃棄物の量も減り、ゴミ処理が大変ラクになりました」(検査ご担当者)
こうした結果を踏まえ、ペトリフィルムTM 培地の正式採用が決定。「生菌数測定 用ACプレート」「E.coliおよび大腸菌群数測定用ECプレート」「黄色ブドウ球菌測定用STXプレート」が導入されることになりました。
選定の理由 1 | 従来法よりコロニー判定がしやすく、信頼性の高い検査結果も得られた。 |
選定の理由 2 | 培地調製や判定、廃棄処理などの時間を大幅に短縮。作業を効率化できる。 |
現在、ワタミグループ様では、全国7カ所の手づくり厨房内にある衛生センターに、3M™ ペトリフィルム™ 培地「生菌数測定用ACプレート」「E.coliおよび大腸菌群数測定用ECプレート」「黄色ブドウ球菌測定用STXプレート」を導入。商品や原材料、機器類の微生物検査に活用しています。
「ペトリフィルム™ 培地に移行後、約2倍の検体を検査することが可能になったため、それぞれの製品に付随するパーツの検査や、お弁当に盛り込まれているお惣菜の個別検査など、これまで行なってきた検査プラスアルファの商品検査を行なうことが可能になりました。さらに、原料の検査項目を増やしたり、調理の前工程で抜き取り検査を行なうなど、防衛的な検査も実施。検査の精度向上に役立っています」(池田氏)
検査対象を細分化したことにより、問題の発生しやすい箇所を早期に発見し、的確に対処することも可能となりました。
「検査項目を充実させた結果、汚染の危険性の高い工程、品目ごとの汚染の傾向などを把握することができるようになり、問題の発生を予防する施策をどんどん先行して行なえるようになりました。これは、フードセーフティの観点から見て大きな強みですね」(池田氏)
本格導入後、コスト、人材教育などを含めたトータルな効果も明らかになってきました。
「ペトリフィルム™ 培地導入後、検体数が倍増しましたが、以前と同じ人数で対処できています。また、培地調製など習熟の必要な工程がないため、長期間に及ぶ研修も不要になりました。こうしたメリットを人件費や教育費用などに換算すると、当初見込んでいた以上にコストを抑制できています。最近は、微生物検査経験者を採用するのはなかなか難しい状況ですが、ペトリフィルム™ 培地なら比較的早い段階で安定したレベルの検査を行なえるようになるため、人員不足の問題にも道が開けたと感じています」(池田氏)
これまで培地調製などにかけていた時間を検査結果の解析や、その結果を受けての改善策策定などに注力できるようになったことも大きなメリットでした。
ワタミグループ様では2014年1月、これまで各部署に分散していた業務を集約し、品質保証室の中で原材料仕様書の管理、事故分析、微生物検査、商品一括表示作成承認、メニュー表記確認承認などを一括して行なう新たな品質保証体制を始動。より精度の高い品質保証活動の実現をめざして、さらなる強化に取り組んでいます。
「ワタミ手づくり厨房の商品の微生物検査は、冷凍食品工場などと違って出荷判定検査ではありません。お弁当などは特に、検査結果が出た時にはお客様はすでに喫食されたあとですから、我々としてはもっと前工程でハザードを精査し、安全性を高めたい。HACCP的に『CCP(Critical Control Point=重要管理点)で完全にコントロールできているから、安全な商品以外は出荷されない』というところまで精度を高めるのが目標です。品質保証室は『事故がなくて当たり前』という部署ですが、ペトリフィルム™ 培地を活用して精度を高めることによりスタッフの自信を深め、モチベーション向上につなげていければと考えています」(池田氏)
効果・メリット 1 | 従来の2倍の検体を検査できるようになったことにより、検査対象の細分化が可能になった。 |
効果・メリット 2 | 結果の解析を行う時間を以前よりも確保できるようになり、改善策の策定を行うことができるようになった。 |
効果・メリット 3 | 人件費や教育費用などを含むトータルなコストが以前より減少。人材確保もしやすくなった。 |
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