「HACCPを導入する」と聞くと「設備や施設の整備に多くの費用がかかる」「手間がかかる」という
ことを想像する方も多いのではないでしょうか。
ここではHACCPを導入することにより食品事業者にどのようなメリットがあるのか、
またその衛生管理を支える微生物検査の役割についてご紹介します。
HACCP導入をコストだと捉える経営者も多いのですが、実は衛生レベルの向上以外にも、企業の利益を増加させ、経営リスクを減少させることにつながる3つのメリットがありま す。
(1)生産力の向上
工程管理を行うことで不良品を減少させることができ、製品の品質の安定につながります。品質にばらつきがなくなれば歩留まりが改善し、全体の生産性も向上します。
(2)商品力の向上
製造工程の管理記録を作成すれば、取引先へ商品の安 全性を示すこともできます。取引先の工場視察をきっ かけに商品採用が決まるという事例も少なくありませ ん
(3)企業力の向上
工程管理や作業者の手指ふきとり検等の作業者の衛生管理記録を従業員にフィードバックすることで、従業員の衛生意識の向上にもつながります。
食品ならびに環境の微生物検査は可能な限り食品を取り扱う事業者すべてで実施すること望ましいとされています。
その理由は、食品製造過程のポイントとなる箇所で微生物検査が行われていれば、トラブルが生じた際に微生物検査の結果をもとに迅速な対応ができるためです。
したがって、微生物検査を実施することが望ましいと考えられる食品を取り扱う事業者には、最終製品を製造する業種以外にも、以下のような業種も含まれると考えられます。
食品の原材料を生産・製造している業種
食品の中間材料を製造している業種
食品やその原材料を輸送する業種
食品の再包装を行っている業種
など
上記以外にも、食品の取り扱いにおいて微生物の汚染や微生物の汚染や増殖の恐れがある業種では、微生物検査を実施することが望ましいです。
<役割①>
重要管理点の管理手法の検証
例:中間製品の微生物検査
HACCPに基づく工程管理では、製品に食中毒菌のリスクがある場合にそのリスクを低減する工程(重要管理点)として加熱工程や冷却工程 を設定します。
この工程を常に管理(モニタリング)したうえで、その管理方法が正しいかどうかを 検証·確認するために、重要管理点の工程前後で中間製品の微生物検査を行う必要があ ります。
<役割②>
HACCPの考え方を導入した製造工程全体の衛生管理の運用の検証
例:最終製品の微生物検査
HACCPによる工程管理においては、一つひとつの重要管理点の管理手法に問題がない場合でも、最終製品の検査を通して、製造工程全体の衛生管理の仕組みが適切に働いているかを検証・確認する必要があります。
すべての食品事業者はHACCP制度化を避けて通ることが できません。
文書や記録で安全な衛生管理を証明できる”仕組み (HACCPの考え方に基づく衛生管理)”の導入が求められて います。
食品の衛生管理は、従来の「最終製品の抜き取り検査の仕組 み」から、HACCPに基づく工程管理へ変わります。
HACCPに基づく工程管理を行えば、生産力・商品力・企 業力の向上が可能です。
工程の衛生管理が正しく行われていることを検証するため の方法の1つとして微生物検査があります。微生物検査の 手法は「寒天培地を用いた方法」と「迅速・簡便法」に大 きく分けられます。ここでは、これから微生物検査をはじ める方におすすめの「迅速・簡便法」のメリットをご紹介 します。