新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行は、多くの人々の生活様式に劇的な変化を与えてきました。
一般市民の、科学に対する考え方、接し方、関わり方にも変化があった、という具体的例が報告されています。新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行する中、科学者や専門家は新時代のロックスターのようになり、友人や家族は常に情報を求め、ウイルスへの免疫、治療法、感染対策などに関して専門家らが斬新な意見を述べ、科学的な手法についての情報がリアルタイムで拡散され、世界各国のリーダーが科学による新しい生活様式へのシフトを進め、それが経済や公衆衛生に大きな影響を与え、個人用保護具が日常の会話でも普通に話されるようになってきました。
第三回目の3M State of Science Index (ステート・オブ・サイエンス・インデックス) では、科学への懐疑的な意識が最も大きなトレンドとなりました。日本の調査データによると、科学に対する懐疑主義は3年連続で上昇しました(2018年の 23%から2019年は 29%に、2020年パンデミック前調査では 32%まで上昇)。
しかし2020年夏、新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行する中、このトレンドが逆転しました。
科学への懐疑的な意識を抱いていた人々が、その妥当性と重要性に注目するようになったのです。今回の調査で、科学に対する懐疑主義は21%と、3年間の調査で初めて減少しました。
ほかにも楽観的な兆候が見られています。
しかし、すべてがめざましい変化を遂げたわけではありません。パンデミック前、科学がもたらすメリットを議論する際に、科学を支持すると答えた日本人は9%に留まりました(グローバル 20%)。パンデミック期の調査で新たに加えられた設問では、新型コロナウイルス感染症をきっかけに科学を支持する気持ちが強まったと答えた日本人は20%、支持する気持ちが弱まった、または変わらないと答えた人は80%でした。
新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行してもしていなくても、科学や科学の擁護に関する課題は多々あります。
4回に渡って実施された調査では、科学で解決するべき最も重要な問題として、医療とサステナビリティという2つの問題が継続的に上位を占めています。他の問題も重要であり、主な懸念点として、人種的平等やSTEM教育の公平性があげられています。
新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行する前に得られたインサイトは、人々がサステナビリティを優先事項として企業に対応を求めていることを知る重要な手がかりとなります。
まとめると、新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行による優先事項が新たに生じても、環境問題は依然として重要な課題であるようです。
では科学に何ができるでしょうか?
今後のグローバルな課題について考えると、STEM教育を受ける機会を設けることが問題解決の大きな鍵であると思われます。新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行以降、STEM関連のキャリアを積み、将来的に社会貢献を果たす人材を増やすことが大切だと考える回答者は60%に達しています。
人種、民族、性別などの格差や科学系の授業が受けられないなどの問題が、科学分野へ進む人材を増やす上で障害となっています。
日常生活との関連性がもっと高ければ、学生たちは科学系のキャリアを積もうというモチベーションを持つだろうと答えた人が半数(51%)にのぼりました(グローバル 42%)。
学生たちのモチベーションを高める要素として、他には以下のような意見が上位にあげられています。
これだけは言えます。新型コロナウイルス感染症の拡大を抑制するため、世界は一つとなって「科学を理解する」必要があることに賛同しています。一方で、期待と現実との間にギャップがあることも認識されています。自分の国よりも他の国々の方が科学を重視していると考える回答者は61%にのぼっています。
では、世界的な課題を解決する科学的、技術的ソリューションを推進させるため、他に何ができるでしょうか?
回答者からは「連携」との意見が上がっています。
データによると、社会的課題を解決する上で政府が鍵を握るとしても、これらの問題に政府のみで取り組むことは期待されていません。政府、非営利団体、民間セクター、さらには市民一人ひとりが連携することが、科学的なソリューションによって変化を生み出す重要な機会になると見なされており、3Mのような企業が政府と連携して世界的な課題の解決に取り組むことを人々は期待しています。将来的なパンデミックや疾病の発生に備えるという意見は、次いで2位となりました。
日本では科学を支援する上で政府が果たす役割は重大です。
各セクターや個人が連携して科学の進歩を実現させる必要があります。
科学の役割が世界中の人々にもっと認知されれば、科学はもっと支持されるようになるでしょうか?この調査が、ここ数か月で科学の重要性が人々の間に浸透し、評価が高まっていることを示しています。
State of Science Index(ステート・オブ・サイエンス・インデックス)の背景や意図について詳しく見る。