CRBSIゼロを目指して医療従事者ができること
-米国での臨床経験を踏まえた提言

  • 横須賀市立うわまち病院 集中治療部 部長 牧野 淳 先生

    横須賀市立うわまち病院
    集中治療部 部長
    牧野 淳 先生

  • カテーテル関連血流感染(CRBSI)は、カテーテル挿入患者がハイリスク集団であることから重症化へ移行する可能性が極めて高く、医療関連感染の中でもとりわけ厳格な予防策の実施が求められている。CRBSI予防策の重要なポイントとしてカテーテル挿入時の無菌操作とカテーテル留置中の挿入部位の適切な管理があげられる。
    本講演では、横須賀市立うわまち病院 集中治療部の牧野 淳先生にICUでのCRBSIゼロを目指したカテーテル管理を中心に、近年、CRBSI低減のエビデンスが得られているクロルヘキシジン含有ドレッシングの使用意義について米国での臨床経験を踏まえながらお話いただいた。

CRBSIのリスク因子

  • カテーテル関連血流感染(CRBSI)は、ひとたび罹患すると、容易に重篤な状態へと進展し、血栓性静脈炎や感染性心内膜炎などの合併症を併発する可能性も高い(表1)1)。深部組織感染が多いため治療に難渋し、抗菌薬の長期投与が必要となる。一方で薬剤耐性菌の世界的な増加と新規抗菌薬開発の減少傾向により治療可能な抗菌薬の枯渇が懸念されている。こうした背景からCRBSI予防策の重要性がますます高まっている。
    CRBSIのリスク因子には、骨髄移植、免疫不全などの宿主因子と挿入手技や挿入部位ケアなどのカテーテル因子がある(表2)2)。このうちカテーテル因子には介入が可能で、中心静脈カテーテル(CVC)を例にとると、事前の手指衛生、0.5%以上のクロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)含有アルコールによる挿入部位(感染リスクの最も低い鎖骨下静脈3))の皮膚消毒、キャップ、サージカルマスク、滅菌ガウン、滅菌手袋の着用、全身用滅菌ドレープでの患者の被覆といったマキシマルバリアプリコーションによる無菌操作がある。

  • 表1 CRBSIによる合併症

    表1 CRBSIによる合併症

  • 表2 CRBSIのリスク因子

    表2 CRBSIのリスク因子

カテーテル挿入部位の適切な管理

  • CRBSIを起こす病原微生物の侵入門戸は、カテーテルの外側60%、カテーテルの内側12%、不明28%と報告されている4)。カテーテルの外側から侵入した皮膚常在菌(MRSA、表皮ブドウ球菌など)が、CRBSIの原因菌として最も多い。
    カテーテル挿入部のケアとして、透明ドレッシングの5~7日ごとの交換(汚染や剥離の場合はその都度)、交換時のCHGアルコールによる皮膚消毒、カテーテルハブ、コネクター、ポートの消毒、96時間以内ごとの投与ルートの交換があげられる5,6)。こうした手技のほかに皮膚常在菌の侵入防止を左右するのがドレッシング材の性能である。
    従来のドレッシング材には、患者の汗や体動で剥がれやすく微生物の温床になりかねない、被覆されたカテーテル挿入部位の視認性が悪いため微生物汚染に気づきにくい、という問題があった。そこで開発されたのが、3M™ テガダーム™ CHG ドレッシングである。本製品は、挿入部位の視認性、強粘着による固定性、貼付時の操作性に優れ、CHGの含有による抗菌効果を有する。

CHG含有ドレッシング有効性と費用対効果

  • CHG含有ドレッシングの有効性を示すエビデンスが海外から報告されている。英国の大学病院ICUの273例で行った短期留置型CVCにおけるCHG含有ドレッシングと通常ドレッシングとの比較では、カテーテル挿入部、縫合部位、縫合糸の細菌数は、CHG含有ドレッシング群において有意に減少した(表3)7)。フランスでは、12のICU 1,879例を対象に行われたCHG含有ドレッシングと非CHG含有ドレッシングとの比較研究で、1,000カテーテル・日あたりの菌のコロニゼーション、CRBSIのいずれもCHG含有ドレッシング群に有意な減少が認められ、カテーテルへのコロニゼーションで61%、CRBSIで60%の発生減少を示した8)。また、CHG含有ドレッシングと通常ドレッシングを比較調査したメタアナリシスでは、CRBSI、コロニゼーションともにCHG含有ドレッシング群で有意に減少したとしている9)
    CHG含有ドレッシングの費用対効果についてもいくつかの報告がある。フランスのICUにおける医療経済モデルでは、CHG含有ドレッシングを使用することにより、患者1,000例あたり11.8件のCRBSIを予防し、1件予防するごとに12,046ユーロ(約150万円)の医療費削減になると試算している10)。英国のICUでCHG含有ドレッシングと通常ドレッシングを比較した費用対効果の調査では、ドレッシング自体の費用はCHG含有ドレッシングが高いものの、CRBSIや局所感染の抑制によって大幅な節約効果がみられ、総費用としては1,000 例あたり77,427ポンド(約1,120万円)、1例あたり換算で77ポンド(約11,000円)の総費用削減効果が認められたとしている(表4)11)。また、CHG含有ドレッシングの副作用として接触性皮膚炎があげられるが、全身的な副作用は報告されていないため12)、総費用への影響も少なく、使用を躊躇する要因にはならないと考えられる。
    これらの有効性・費用対効果のエビデンスを受けて、CRBSI低減のためのCHG含有ドレッシングの使用が推奨されている。NICE(英国国立保健医療研究所)は、CVCや動脈カテーテル挿入部への使用によるCRBSIや局所感染の軽減と、1症例あたり1万円、年間5億7,880万円~14億9,000万円の節約効果を根拠にCHG含有ドレッシングのケアバンドルとしての使用を推奨している13-15)。米国CDCは、「血管内カテーテル関連感染予防のためのガイドライン」(2011年)を2017年に一部改訂し、18歳以上の患者を対象にCRBSI、CLABSI低減のために短期留置CVC挿入部にはFDA承認ラベルのあるCHG含有ドレッシングを使用することをカテゴリー1Aで強く推奨している16)

表3 CHG含有ドレッシングの有効性

表3 CHG含有ドレッシングの有効性

表4 CHG含有ドレッシングの費用対効果(英国ICU)

ケアバンドルとCHG含有ドレッシング

ICUにおける中心ライン関連血流感染(CLABSI)予防のためのケアバンドルの有用性について多くの研究がなされている。米国では、Institute for Healthcare ImprovementがCLABSI予防のためのケアバンドルとして①手指衛生、②中心静脈カテーテル挿入時のマキシマルバリアプリコーション、③CHGを用いた皮膚消毒、④大腿静脈カテーテルの回避、⑤不要なカテーテルの抜去の5項目を推奨しているが17)、96研究のメタアナリシス(1990~2015年)の結果によると、ICUにおける1,000カテーテル・日あたりのCLABSIの発生は、ケアバンドル施行前の6.4から施行後は2.5となり、ケアバンドル実施により有意に減少したことが示された18)。また、ケアバンドルにCHG含有ドレッシングの使用を追加した群でCRBSIを比較した調査では、CHG含有ドレッシング使用追加群においてCRBSI発生率が減少した(表5)12)
これらの結果からCRBSI防止のためのケアバンドルにCHG含有ドレッシングのルーチンの使用を加えることは有用であることが示された。

表5 CHG含有ドレッシングの使用とCRBSI+感染率不明菌血症の発生密度率の推移

表5 CHG含有ドレッシングの使用とCRBSI+感染率不明菌血症の発生密度率の推移

米国での臨床経験を踏まえたCHG含有ドレッシングの今後のあり方

  • 米国では院内感染対策が整備されていない施設は、罰則として保険医療費が削減されるため、院内感染の発生は病院経営を揺るがしかねない。こうしたシビアな状況が背景にあることから、米国では、感染対策に病院全体で積極的に取り組んでおり、複数の感染制御の医師、感染専門看護師、感染制御認定薬剤師が専従として感染制御部門に配置されている。私が留学中の臨床経験で得た印象として、米国ではCRBSI予防の取り組みの中でバリアプリコーションに対する意識が非常に高いということがある。ディスポーザブル製品やオールインワンのキットが充実していることや、マスク、手袋、ガウンなどの個人防護具をセットして収納した移動式のボックスを常にベッドサイドに配置していることがバリアプリコーションの徹底を可能にしている。CVCについては、微生物汚染の早期発見のために挿入部位の観察に重点が置かれていることから、剥がれにくく視認性があり、消毒効果も備えたCHG含有ドレッシングが用いられ、カテーテル早期抜去と留置期間中のCRBSI発生防止に注力している。
    CHG含有ドレッシングがCRBSI低減に大きく寄与することは、多くのエビデンスが示している。今後、CHG含有ドレッシングのルーチンの使用がCRBSI予防のケアバンドルに加わることが期待される。

    ページトップに戻る

引用文献

  • 1)Maki DG et al. Mayo Clin Proc. 2006;81(9):1159-71.
    2)Tokars JI et al. Ann Intern Med. 1999;131(5):340-7.
    3)Merrer J et al. JAMA. 2001;286(6):700-7.
    4)Safdar N et al. Intensive Care Med. 2004;30(1):62–7.
    5)Marschall J et al. Infect Control Hosp Epidemiol. 2014;35(7):753-71.
    6)O’Grady NP et al. Clin Infect Dis. 2011;52(9):e162-93.
    7)Karpanen TJ et al. Am J Infect Control. 2016;44(1):54-60.
    8)Timsit JF et al. Am J Respir Crit Care Med. 2012;186(12):1272-78.
    9)Safdar N et al. Crit Care Med. 2014;42(7):1703-13.
    10)Maunoury F et al. PLoS One. 2015;10(6):e0130439.
    11)Thokala P et al. Journal of Infection Prevention 2016;17(5):216-23.
    12)Eggimann P et al. Intensive Care Med. 2019;45(6):823-33.
    13)Jeanes A et al. British Journal of Nursing. 2015;24(19):S14-19.
    14)Jenks M et al.Appl Health Econ Health Policy. 2016;14(2):135-49.
    15)National Institute for Health and Care Excellence. Medical technologies guidance [MTG25],2015. Updated September 2019.
    16)CDC. Guidelines for the Prevention of intravascular Catheter-Related infections, 2011. Updated Recommendations[July 2017].
    17)Institute for Healthcare Improvement. How-to Guide: Prevent Central Line-Associated Bloodstream Infection,2012.
    18)Ista E et al. Lancet Infect Dis 2016;16(6):724-34.


  • 収録:2020年3月 第47回日本集中治療医学会学術集会 教育セミナー11にて

    3M、テガダームは、3M社の商標です。

    *承認番号:22200BZX00663000 販売名:テガダーム CHG ドレッシング



Follow Us
地域を変更する
日本 - 日本語