カテーテル由来血流感染(CRBSI)を発症してしまうと、治療の中断とカテーテルの再挿入や、抗菌薬などの医療費の増加、入院期間の延長などが発生し、患者さんにとっても医療施設にとっても影響があります。
一方で、ほとんどのCRBSIは発生を予防することができ、それにより患者の安全性向上や医療費削減ができるとの報告があります。
参考文献:
CDC, Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheter-Related infections 2011
Intensive Care Med. 2008 Dec;34(12):2185-93.
Journal of Hospital Infection Volume 76, Issue 4, December 2010
カテーテル由来血流感染(CRBSI)の起因となる細菌・微生物は、皮膚常在菌であるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、腸球菌、カンジダ属が多くを占めます。
中心静脈カテーテルの場合、起因菌の19%~21%をグラム陰性桿菌が占めています。
ICUでは特に抗菌薬耐性が問題となっており、メシチリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、今やICUで得られる全ての黄色ブドウ球菌分離株の50%を占めるといわれています。また、肺炎桿菌、大腸菌、緑膿菌などのグラム陰性菌や、カンジダ属でも抗菌薬への耐性が増加しているといわれています。
参考文献:
CDC, Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheter-Related infections 2011
カテーテル由来血流感染(CRBSI)の起因となる細菌や微生物は複数の汚染経路を持っており、ここではカテーテル管腔の外側からの汚染と、カテーテル管腔の内側からの汚染に分けて考えてみます。
■カテーテル管腔の外側からの汚染
カテーテル刺入部で皮膚細菌叢に起源をもつ細菌・微生物がカテーテルの外側表面に沿って血管内に伝播した結果としての汚染は、CRBSIの原因の60~65%を占めると言われています。 そこで、カテーテル刺入部の管理が重要になります。
■カテーテル管腔の内側からの汚染
一方で、輸液または接続部から細菌・微生物が侵入し、カテーテルの内側を通して伝播した結果としての汚染は12~30%と言われており、管理をより徹底するにはこうした原因に対しても対策が必要です。
参考文献:
Safdar N, Intensive Care Med 30:62-67, (2004) Bouza E, The European Society of Clinical Microbiology and Infection Diseases (2002)
血管内カテーテル関連血流感染防止ガイドラインCDCの血管内カテーテル関連血流感染防止ガイドラインは2011年4月に改訂され、最新の研究成果に基づく推奨内容を盛り込んだ内容になっています。 その後、2017年に部分的に改訂されました。改訂対象は、クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)含有ドレッシングの推奨で、感染防止効果と有害事象の双方を考慮して策定された内容となっています。
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ダウンロードはこちら血管内カテーテル関連血流感染防止ガイドライン2011(英語版)
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CDCガイドラインの推奨には、発行時点での科学的データ、理論的根拠、適用可能性、経済的インパクトに基づいて推奨の強さが示されています。
「カテゴリーIA」から「未解決問題」まで設定されており、「カテゴリーIA」が強く推奨されているものです。
カテゴリーIA |
実施が強く推奨され、適切にデザインされた実験的、臨床的または疫学的研究によって強く支持されるもの
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カテゴリーIB |
実施が強く推奨され、いくつかの実験的、臨床的または疫学的研究および強い倫理的根拠によって支持されるもの、またはエビデンスは限られているが広く認められた手技(無菌操作など)
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カテゴリーIC |
州または連邦政府の法律、規則、基準によって要求されるもの
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カテゴリーII |
実施が提案され、示唆的な臨床的、疫学的研究または理論的根拠により支持されるもの
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未解決問題 |
十分なエビデンスがない、またはその効果に関してコンセンサスが得られていないため未解決問題とされるもの
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引用文献:CDC, Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheter-Related Infections (2011)
複数の予防策をバンドル化、つまり“束にして”同時に実施することで感染対策のパフォーマンスが向上することと、対策の遵守率を記録し報告することが強調されています。
滅菌ガーゼドレッシングと滅菌フィルムドレッシングは、それぞれ利点と欠点があります。フィルムドレッシングは観察しやすく、交換頻度を少なくできますが、発汗や滲出液が多い場合やドレッシング材による皮膚トラブルがある場合にはガーゼに切り替えるなど、患者の状態に合わせて選択するとよいでしょう。
利点 | 欠点 | 短期留置用CVCに使用した場合の交換頻度 | |
滅菌ガーゼドレッシング | 発汗や滲出液が多い場合に吸収できる | 剥がさないと刺入部が観察できない | 2日ごと +汚染時 |
滅菌フィルムドレッシング | 剥がさなくても刺入部が観察できる | ・発汗や滲出液が多い場合吸収できない ・粘着製品による皮膚トラブルがある場合には使用できない |
7日ごと +汚染時 |
クロルヘキシジンを含有したドレッシング材については、2017年にCDCの血管内カテーテル関連血流感染防止ガイドラインが部分的に改訂されました。改訂対象は、クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)含有ドレッシングの推奨で、感染防止効果と有害事象の双方を考慮して策定された内容となっています。
執筆者:
山形大学医学部附属病院 検査部・感染制御部 部長/病院教授 森兼 啓太 先生
シャワー浴の際の管理は、カテーテルやエクステンションチューブなどを防水カバーで覆うこと、湯船に浸からないことを心がけましょう。
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【防水カバーとしての未滅菌フィルムロールの使用例】
より対策を徹底するには、カテーテル管腔の内側からの汚染対策として、カテーテル接続部の管理にも目を向けてみましょう。
米国では、針刺し防止のためにニードルレスシステムを使用することが法律で義務付けられています。しかしながら、そのアクセスポート・ニードルレスコネクタを70%アルコールで3~5秒間拭いただけでは十分に消毒できないことが示されており、そのためCDCガイドラインでは適切な消毒剤でゴシゴシ擦るように拭くことが推奨されています。
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