完成した自動研磨システムにおいて、ロボットは簡単に研磨しているように見えます。しかし、最適な状態でロボット研磨をさせるには研磨工程に対する詳細な分析と多くの課題解決が必要です。最初から完璧な自動化を確立することは困難ですが、システムインテグレーターと以下の要素を基本設計に盛り込んでおくことで成功の可能性は高まります。
こちらでは設計段階で考慮しておくべき技術的要因をご説明します。
ロボットの可搬重量は、先端工具の重量と、可搬や作業時に加わる負荷の最大値を上回ることが重要です。先端工具には荷重制御装置、ビジョン用カメラ、研磨機やハンド等、先端に取付くすべての部品・機器類が含まれます。
可搬重量の余裕が少ないと、動作の俊敏性が制限される場合があります。ロボットの可搬重量やサイズが大きくなると、設置面積や設備重量が大きくなります。そのため、設置面積や床荷重等により制約がある場合もあります。
ロボットシステムにはさまざまな補助装置が必要となります。例えば、ベルト研磨機、グラインダ、ロボットハンド、測定・検査装置、部品置場等。
これらの設備も設置面積や投資金額に考慮しておく必要があります。
ロボットの可搬重量と同様、研磨機の出力にも十分な配慮が必要です。例えば、ベルト研磨機による研磨加工において5kw必要だった場合、1kwのモーターでは研磨効率が大幅に低下してしまい、生産性が低下、コストも高くなってしまう可能性があります。よって、研磨工程等のモーター負荷特性を把握しておくことが必要です。特に、連続的に研磨を行う場合は、連続して安定した出力を確保しておくことが重要です。これらを考慮しておかないと、モーターの交換が頻繁に発生し、メンテナンス費用が増加する場合があります。
多くの研磨材は、用途に応じて適した研磨速度があります。用途に適した速度で研磨することは、最良の研磨効率を得るために重要な要素です。例えば、ファイバーディスクの様な研磨材は、低速では研磨性能が低下します。そのため高負荷でも回転の低下を抑えたい場合は、回転数が低下しにくい駆動システムにする必要があります。
また、研磨材の特性も考慮する必要があります。例えば研磨ベルトは、一般的に使用が進むにつれ研磨力が低下します。また、研磨ホイールは使用が進むにつれ外径が小さくなり周速が低下、研磨力が低下します。これらの研磨力の低下は、変速モーターを用いて回転数で補正することができます。
研磨材は使用するにつれて研磨特性が変化します。そのため、ロボットで研磨する時は研磨力やホイール径の変化等を考慮しておく必要があります。例えば研磨ベルトで研磨力が低下する場合は、研磨速度や研磨荷重を補正するようにプログラムすることが有効な場合もあります。
さらに、消耗した研磨材を新しいものに交換するプロセスも考えておく必要があります。研磨材の交換を完全に自動化する方法と、オペレータが関与する半自動、システムを一度停止してオペレータが交換する方法などが検討できます。
単一工程(粗研磨工程のみ、など)での研磨システムではなく、複数の研磨ステップ(工程)を行う場合、最適なシーケンス(加工手順)を決める必要があります。
ロボットが部品をつかむ場合(ワーク・オン・ハンド)は、適切な研磨材を取り付けた複数の研磨機に対し、ロボットが順番に当てることで研磨することができます。
ロボットが研磨機を持つ場合(ツール・オン・ハンド)は、ツールチェンジャ―等を利用して、各ステップに適した研磨材を取り付けた研磨機に持ち換えて研磨することができます。
ステップ毎に個別のロボットを使用することもできます。ただし、部品の受け渡しによる効率低下や、ロボットの設置面積や使用台数の増加による投資規模の拡大を考慮する必要があります。
手作業研磨加工と同様に、ロボット研磨にも集塵を検討する必要があります。湿式または乾式のいずれの場合でも、研磨装置の性能が最大化され、研磨後のワークに粉塵が残らない集塵装置をシステム環境の中に搭載することが重要です。集塵を考慮しない場合、定期的な清掃やメンテナンスが頻繁になり、システムのダウンタイムが増えることがあります。
ロボットはプログラムにより特定の動作を繰り返し行わせることはできますが、状況を感知してロボットの動きに反映させる機能はあらかじめ持っていません。そのため、ロボットには、必要に応じて状況を感知し反映できるようにすることが必要になります。その中で、荷重制御やビジョンシステム等のセンシング技術は自動化された研磨工程確立に重要となります。
荷重制御の機構を設計に組み入れないと、安定した研磨を行うことが難しい場合があります。研磨工程は、それぞれの用途に適した研磨圧力で研磨を行うことで機能しますが、ロボットの位置制御のみで適した圧力を得ることは難しい場合があります。しかし、荷重制御を組み合わせることにより、制御された荷重を加えることができ、適した研磨圧力で研磨を行うことが可能となります。
荷重制御にはいくつかの種類があります。受動的な荷重制御(バネや簡易的なエアシリンダー、など)は、複雑な形状対応や重力の影響を解決することは難しい場合もありますが、シンプルで経済的なシステムです。フィードバックによる荷重制御は、適切なシステムで重力等の影響を反映させ、検知した情報を活用して荷重を制御するため、複雑な形状の研磨や、鉛直方向の角度変化による重力影響を解決できる場合があります。
ビジョンシステムを用いることで研磨工程を調整することができます。加工する部品の向きや位置を確認しロボットの動きを調整することで、正しい位置で部品をピックアップすることができます。また、加工後の部品サイズや部位のサイズを測定することで、適切な研磨が行われたか確認することも可能とします。
複数個所を研磨する場合、部品の形状によっては加工部品の再把持が必要となる場合があります。特に、ロボットが部品を把持して研磨する方式の場合(ワーク・オン・ハンド)は、再把持の工程はサイクルタイムに大きな影響を与える可能性があります。再把持の回数が増えるほど、サイクルタイムは悪化します。
ロボットハンドのグリップ力も考慮が必要です。研磨工程の荷重と振動に耐えうる十分な強度が必要です。軽量なグリッパで高荷重の鋳物ゲート研磨の用途では、研磨中部品を適切に固定しつづけることができません。
オペレーターは、ロボットの調整や保守を行う必要があります。研磨材の交換や削りカスの除去等の作業を行う際に、安全を確保することはとても重要です。ロボットシステムについてはガードやインターロック等の安全性を確保するための装置、また、ロックアウトやタグアウト等の運用手順を検討しておく必要があります。
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