他の歯科治療の場合と同じように、臼歯部のCR充填に際してもBio Emulation(生体の構造、色、形態の模倣)の考え方は非常に重要です。
①臼歯部の構造を模倣する。
②臼歯部の色を模倣する。
③臼歯部咬合面の形態を模倣する。
模倣するには、歯牙の構造、色、形態を知り、理解し、出来るように練習することが不可欠です。
臼歯部のCR修復では、適切なシェードを選択することよりも、むしろ咬合面の凹凸による光の乱反射と陰影を作ることが、自然に仕上げるポイントになります。このため、自費CRで臼歯部を修復する際は、咬合面形態を丁寧に回復できることが最低条件になります。
臼歯部咬合面の小さなⅠ級窩洞を修復する場合、咬合面の形態をキチンと付与すれば、単色でも充分審美的な修復が可能です。特に、天然歯に近似した蛍光発色性のあるフィルテック™ シュープリーム XTE コンポジットレジンを使うと、自然感あふれる修復が可能です。単色で修復する場合は明度の高いエナメルシェードよりも、わずかに明度の低いボディシェードを選択すると自然感が出やすくなります。
また、臼歯部咬合面に充填されたアマルガムやメタルインレーをCRで置き換える症例は、患者さんの審美的な満足度も高く、2~3シェードで修復できるので自費CRの最適症例です。
このような症例の場合、感染象牙質や着色象牙質の一部を取り除いても着色が強く出ることがあります。このような場合、周囲を歯質に囲まれたⅠ級窩洞では、窩洞の最下層に透明度を抑えたデンティンシェードを充填して着色部の色を遮断することがポイントです。
一般的に天然歯の象牙質はエナメル質に比べ明度が低いと思われがちですが、CR充填に際しては天然歯より明度の低いデンティンシェード(暗い色)を選択すると、2層目のエナメルシェード充填後の最終的なシェードが周辺の歯質より明度が低く(暗く)なることがあるので注意が必要です。
積層に際してデンティンシェードを使う場合は、「最終シェードよりも少し明るめのシェードを選択すること」が成功の鍵となります。
シェードテイキングは必ず治療前、歯が乾燥しないうちに手早く行うことが肝要です。また、古い充填物がある場合は、手早く充填物を除去した後に再度確認するといいでしょう。人の目は明度に最も強く反応しますから、シェードテイキングする時のポイントは色相(色の違い)ではなく明度を確認することです。
象牙質の色の選択に迷う場合は、上顎犬歯の唇側中央のシェードと同じにするといいでしょう。