重合収縮量と重合収縮応力:ご使用のコンポジットレジンにどんな意味があるのでしょうか?

重合収縮量と重合収縮応力:ご使用のコンポジットレジンにどんな意味があるのでしょうか?

収縮量と収縮応力の違いとそれがなぜ重要かご存知ですか?多くの場合、二つの言葉は概ね同じ意味で使用されるのですが、実は、コンポジットの重合の全く異なる二つの結果です。そして、これらは修復治療の成功に大きな影響を及ぼす可能性があります。

Dr. Timothy Dunbar, PhD

重合収縮

  • 重合収縮

    ウールのセーターを熱い乾燥機に入れると縮むように、コンポジットレジンも重合の間に収縮します。これは、モノマーと呼ばれる単純な分子が組み合わさってより大きく複雑な分子、つまりポリマーを形成する一連の過程です。結果として得られる生成物は、組み合わされるモノマーによって強度や弾性など、様々な固有の物理的性質を持ちます。しかし、重合にはいくつかの避けられない弊害も伴います。

    修復用コンポジットレジンでは、レジンが半液体やペーストが固体に変わる時、その密度が体積と共に変化し、おおよそ1.5~5%重合収縮しています。


  • 重合収縮応力 1-4

    重合収縮応力 1-4

    大好きなウールのセーターをうっかり縮ませてしまったとします。それを着続けたい場合、どうなるでしょうか?着心地が悪くてきついだけでなく、手首やウエストにも隙間ができるでしょう。

    これが収縮と収縮応力の基本的な違いです。自ずと縮んだセーターや重合後のコンポジットはより小さくなります。その結果、体に、そして窩洞内で、不快なことが生じます。収縮は収縮応力を引き起こしますが、これらは同じものではありません。

    収縮応力は、重合過程でアドヒーシブと周囲の歯質にかかる力です。この力が接着性結合、またはコンポジットや歯質の強度を超えると、次のような様々な問題を引き起こします:

      

    • 内部や辺縁部でのギャップ(間隙)の原因となる剥離
    • 歯質や修復/補綴材料の破折
    • 辺縁部の着色
    • マイクロリーケージ(微少漏洩)
    • 二次う蝕
    • 術後の知覚過敏 1-4

違いを知ることが大切な理由

  • 違いを知ることが大切な理由

    コンポジットレジンは、必然的にある程度体積が収縮します。だからといって、必ずしも修復治療の成功に影響するわけではありません。服の材料が違えば、乾燥機での反応が違うように、コンポジットが違えば、引き起こされる重合収縮量も応力も違ってきます。

    ウールのズボンとスパンデックスのタイツを乾燥機に入れて、両方が同じぐらい縮んでしまったところを想像してみてください。着てみるのが不快なのはどちらだと思いますか?材料の性質により、スパンデックスは伸びて体へのストレスは比較的少ない一方で、ウールのズボンはゴワゴワして、あまり融通が利かず、おそらく縫い目が裂けるでしょう。同じように、フロアブルコンポジットは、ペーストタイプと同程度(もしくはそれ以上に)収縮しますが、弾性係数が小さいため重合応力は解放されます。

    これが、収縮と収縮応力の違いを知るだけでなく、使用しているコンポジットの性質に注意を払うことがとても大切である理由です。防縮加工済みのウール地を買っても、快適なフィット感が保証されないように、重合収縮量の小さいコンポジットを選んでも、必ずしも応力が小さくなるわけではありません。


対処法

  • 対処法

    重合収縮を完全に取り除くことはできませんが、応力を少なくする方法はいくつかあります。例えば、従来のコンポジットレジンでは、重合収縮量と応力を減少させるため、積層充填が求められます。また、その重合収縮量は使用するコンポジットレジンの性能によって大きく左右されます1-3。 しかし、このテクニックでは、空隙、適合不良や血液や唾液による汚染の可能性も高くなります。つまるところ、重合収縮応力を減らすには、正しい材料を選ぶということに行き着き、それが填入と窩洞形成をシンプルにします。例えば、3M™ フィルテック™ フィル アンド コアフローのような最新のバルクフィルタイプ では応力を低減させたモノマーと深い重合深度によって、積層テクニックは不要でワンステップで填入できます。


結論

コンポジット修復を行う時には、重合収縮と収縮応力は避けられません。しかし、乗り越えられない障害ではありません。どのようにそれぞれが直接修復の成功に影響するかがより理解できれば、より周到な準備ができ、各症例で最適なものを見つけることができるでしょう。

  

出典

Soares, Carlos José et al. Polymerization shrinkage stress of composite resins and resin cements – What do we need to know?.Braz. oral res. [online].2017, vol.31, suppl.1, e62.

Alomari, Q. D., Barrieshi-Nusair, K. & Ali, M. Effect of C-factor and LED Curing Mode on Microleakage of Class V Resin Composite Restorations.European Journal of Dentistry 05, 400–408 (2011).

Malhotra, N., M, K. & Acharya, S. Strategies to Overcome Polymerization Shrinkage − Materials and Techniques.A Review.Dental Update 37, 115–125 (2010).

Polymerization Shrinkage – an overview.ScienceDirect Topics (2017).


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