webLoaded = "false"
webLoaded = "false" Loadclientside=No
周術期低体温予防の取り組み ~RALP(ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術)における体温管理~

周術期低体温予防の取り組み
~RALPにおける体温管理~


※RALP:ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術

webLoaded = "false"
  • 兵庫医科大学病院 手術看護認定看護師 河野 幸一 先生

    兵庫医科大学病院
    手術看護認定看護師
    河野 幸一 先生

webLoaded = "false" Loadclientside=No

術後回復を妨げないために、周術期の体温管理は重要です。
低体温はシバリングや悪寒などの患者さんの不快感だけでなく、血液凝固障害や麻酔からの覚醒遅延、酸素消費量の増大、感染率の上昇などさまざまな合併症を引き起こします。RALPにおける体温管理を中心に兵庫医科大学病院 手術看護認定看護師の河野幸一先生にお話しいただきました。

webLoaded = "false" Loadclientside=No

■周術期低体温を予防するための多角的な取り組み

2015年に周術期体温管理の取り組みを始めました。まず注目したのが、RALPにおける低体温の予防です。当院は2012年にRALPを開始し、手術件数は週に2~4件あります。
RALPの体位固定には、陰圧式固定具を使用し、頭低位の砕石位をとります。2015年当時、体温管理には3M™ ベアーハガー™ ぺーシェントウォーミングブランケット アッパー用 モデル522(以下、モデル522)を使用していました(図1)が、肩~頸部のみの加温で、十分な加温面積が確保できていませんでした。また、患者入室前の手術室温が22~23℃と低めの設定である、術後のシバリングの発生や患者さんから寒さの訴えがしばしばあるといった課題がありました。
そこで、温風式加温装置については、別のタイプのブランケットへの変更を試みましたが、陰圧式固定具を使用した砕石位では上手に固定できず、スタッフから手間がかかる、使用方法が難しいなどの意見が出たため、業務手順の標準化が困難と判断し、モデル522に戻すことにしました。
他方で、患者入室前の設定室温を高くする、術中の加温を必ず実施するなどの低体温予防を行いました。こうした結果、2015年にはRALPにおいて8件の低体温発生があったのが、2016年には5件、2017年には3件と徐々に減少しました。しかし、低体温発生をゼロにすることはできませんでした。なんとかしたい-そう考えていた矢先に、モデル522の改良があり、3M™ ベアーハガー™ ぺーシェントウォーミングブランケット マルチポジションアッパー用 モデル622(以下、モデル622)が採用されました。

webLoaded = "false" Loadclientside=No

■逆U字型の新発想により加温面積が拡大

モデル622は、曲げたり変形させたりしても、温風の流れが妨げられないデザインが特長です。それを生かして逆U字型にし、頸部から両上肢にかけて敷くことで加温面積を広く確保する方法を検討しました(図2)。泌尿器科医と泌尿器科担当看護師に相談したところ、手術支援ロボットのアームに干渉するのではないかとの意見が挙がったため、実際に試して問題がないことを確認し、モデル622の逆U字型での使用が認められました。

webLoaded = "false"
  •  図1 モデル522を使用した砕石位

    図1 モデル522を使用した砕石位

  • 図2 モデル622を使用した砕石位

    図2 モデル622を使用した砕石位
    逆U字型にすることで加温面積を確保できる

    ※モデルでの撮影のためヘッドドレープを使用していますが、実際の臨床において人工呼吸器の使用時以外はヘッドドレープを使用しないでください。

webLoaded = "false" Loadclientside=No

モデル622の特長は、逆U字型での使用による加温面積の拡大だけではありません。タイストリップを手術台に結んで固定したり、胸部にある固定用粘着テープを使用したりすることで、術中もブランケットがずれることなくU字型を保持できます。
さらに、副次的効果もありました。逆U字型にしたことで、ブランケットの先端が砕石位の足袋にかかり、その温風により下肢まで加温できるようになりました(図3)。

webLoaded = "false"
  •  図3 モデル622とレギンスを使用した下肢の加温の一例

    図3 モデル622とレギンスを使用した下肢の加温の一例

    ・下肢の状態を分かりやすくするため、透明レギンスカバーを使用し、赤外線サーモグラフィカメラにて撮影
    ・開脚位で43℃30分加温
     

webLoaded = "false" Loadclientside=No
webLoaded = "false" Loadclientside=No

■低体温予防効果の体感が看護のモチベーションを高める

2012年~2019年に当院でRALPを受けた329名の患者さんの体温を調べたところ、病棟出棟時より手術室退室時が下回った患者さんの割合は、モデル522群では10.2%(24/234名)であるのに対し、モデル622群では9.4%(9/95名)、モデル522群では最大-1.4℃の低下であったのが、モデル622群では-0.5℃でした。英国国立医療技術評議機構(NICE)が定めた正常体温下限値(36.5℃)を下回った患者さんはモデル522群では15.8%(37/329名)、モデル622群では9.4%(9/95名)と約6%減少しました。当院で全身麻酔下手術を受けている患者さんは年間約6,000名いるため、計算上では以前に比べて360名が正常体温を維持できるということになります。
病棟看護師からは術後のシバリングや患者さんからの不快感の訴えが軽減したとの報告を受けています。麻酔科医からも「低体温への取り組みがしっかり行われている」との高評価を得ています。そして何より印象的なのは、手術室看護師が低体温予防効果を体感していることです。“体感する”ことは非常に重要です。体感することで低体温が起きると、いつもと違うことが起きていると捉え、すぐに対応できるようになります。実際に手術室看護師からの相談件数も増え、体温管理に関する意識が向上していることを感じます。この取り組みの成果はさまざまな形で表れており、それが看護のモチベーションのアップにもつながっています。

webLoaded = "false" Loadclientside=No

■手術室・病棟看護師が連携して取り組む周術期体温管理

当院の手術室看護師は約50名です。新モデルに切り替わっても全員が同じように適正使用するために、泌尿器科担当看護師と協働でマニュアルを作成しました(図4)。マニュアルは文字を少なめにし、写真を大きく掲載することで、一目で理解できるように工夫しました。また、朝夕のカンファレンス時に使用方法を説明したり、申し送りノートに使い方を記載し、確認したらチェックすることを徹底し、使用方法の周知を図りました。さらに、必要に応じてRALPが行われる手術室に出向き、担当看護師に使用方法を説明しました。

webLoaded = "false"
  • 図4 RALPにおけるモデル622の使用マニュアル
    図4 RALPにおけるモデル622の使用マニュアル

     周術期体温に関する知識の向上のために、勉強会も定期的に実施しています。2015年頃から手術室看護師を対象に勉強会を始めましたが、病棟からも勉強会開催の依頼が来るようになりました。また、麻酔チャートを確認し、低体温患者のいる手術室をラウンドし、なぜ低体温になったのか、どのような介入をしたら低体温を防げたのか、体温を上げていくためにどのような看護をすればよいのかといったことを外回り看護師と一緒に考えるようにしました。こうした活動を繰り返す中で、体温管理は手術室内だけでなく、病棟でも行うべきもの、つまり術前・術中・術後と一連した看護であるという意識がスタッフの間で育っていきました。
    スタッフの意識が高まったタイミングで、3M™ ベアーハガー™ 深部温モニタリングシステムが採用されました。これは、患者さんの前額部に貼付するだけで精確な核心温が測定できる非侵襲性の装置です。それまでは、麻酔科医が鼻咽頭温を測定していましたが、体位をとってから測定を開始したり、麻酔導入後あるいは手術開始前だったりと測定のタイミングがバラバラでした。そのため、本製品採用前は出棟時体温で比較していましたが、採用後は麻酔導入前からの体温測定開始に統一でき、経時的な体温を観察するという認識がスタッフに広がりました。
    病棟では、出棟前に上着やズボンで患者さんの肌の露出をできるだけ少なくし保温に気を配るなどの工夫を自主的に行うようになりました。また、手術室では、担当看護師が術式に適した加温ブランケットを選択したり、モデル622をRALPだけでなく、消化器の腹腔鏡ロボット支援手術にも応用したりしています。さらには、体温管理にとどまらず、褥瘡対策など他の看護についても再考する姿勢が生まれています。複数の要因が重なり、低体温予防への取り組みが良い方向へ展開しています。

webLoaded = "false" Loadclientside=No

■周術期低体温ゼロを目指して

手術支援ロボットの公的医療保険の適用疾患は、2012年には前立腺がん(前立腺全摘除術)のみでしたが、2016年には腎細胞がん(腎部分切除術)が追加、2018年には胃がんや食道がんなど新たに12疾患が適用となり、拡大しています。おそらく今後も適用疾患は増え続けるでしょう。そうした状況の中で、各疾患に応じた体温管理への取り組みが課題のひとつです。また、12時間以上に及ぶような手術では、術中に看護師が何度も入れ替わるので、全員が同じレベルの体温管理ができるようにすることも大きな課題です。
看護の質向上のテーマとして、周術期の体温管理は取り組みやすい分野だと思います。また、低体温予防に適した温風式加温装置や深部温を精確に測定するデバイスも揃っています。体温は数字で可視化できるため、評価しやすいし、成果は患者さんの声となってすぐに表れるので、スタッフのやりがいにもつながります。やりがいは自主性を育て、他の分野の看護の質向上に広がっていくきっかけにもなります。
当院の周術期体温管理への取り組みはまだ道半ばですが、最終目標は当院から周術期低体温をゼロにすること、患者さんが麻酔から目覚めたとき、「寒い」という言葉が出ないようにすることです。この目標に向かって、全スタッフが連携し協力しながら今後も取り組んでいきます。

ページトップに戻る

webLoaded = "false" Loadclientside=No

収録:2019年5月 兵庫医科大学病院にて

3M、ベアーハガーは3M社の商標です。

販売名:3M ベアーハガー ペーシェントウォーミング ブランケット/管理医療機器 認証番号:223ADBZX00108000
販売名:3M ベアーハガー 深部温モニタリングシステム コントロールユニット/管理医療機器 認証番号:226ADBZX00092000
販売名:3M ベアーハガー 深部温モニタリングシステム センサー/一般医療機器 届出番号:13B1X10109000255


webLoaded = "false"

Follow Us
地域を変更する
日本 - 日本語