神戸大学医学部附属病院
看護部·感染制御部 副部長
感染管理認定看護師
八幡 眞理子 先生
同附属病院
看護師長
中央材料室
小田 千鶴子 先生
同附属病院
看護師長
(前 医療の質·安全管理部)
廣幸 英子 先生
小田 中央材料室では、血液や体液で汚染された器械類(鋼製小物)を仕分け、ウォッシャーディスインフェクター(WD)に入れますが、この一連の作業には作業者の目への血液・体液飛散リスクがあります。その他に用手洗浄の際にも同様のリスクがあります。また当院では、複雑な構造をもつ器械をエアガンで確実に乾燥させる際(図1)、跳ね返ってくる飛沫から眼を防護するようにしています。
八幡 汚染物を取り扱う作業中には、やはり血液・体液の飛散とそれによる眼への曝露は十分起こりえます。したがって、感染管理の視点からも中材業務における眼への曝露防止は極めて重要だと考えています。
廣幸 病棟でも一次洗浄を行うことがあるため、そこでも眼への体液飛散リスクがあります。私は以前、医療の質・安全管理部におりましたので、現場で血液や体液に曝露した職員から報告を受けていました。曝露の報告は、医療の質・安全管理部か感染制御部に入りますが、両部門で情報共有しながら連携しています。
小田 私が滅菌センターに配属された2年前には、用手洗浄以外で体液飛散のリスクがあるという認識はあまりありませんでした。しかし、汚染器械の仕分け作業中に眼の防護具への体液飛散を確認した経験があり、自分でも気づかないうちに飛散していることを実感し、それをきっかけに眼の防護に関心を持つようになりました。
八幡 新人教育では、個人防護具(PPE)の着脱の手順やリスクを想定した臨床場面での装着のタイミングをオリエンテーションに組み込んでいます。普段は、実際起きた曝露事例をもとにPPEが必要な場面について共通認識を持ってもらうよう文書で院内に通知しています。特に眼への体液曝露に対しては防護具の重要性を繰り返し伝え、注意喚起しています。中央材料室などの外部委託職員には年1回、曝露防止の講習会を行っています。
小田 中材スタッフは、患者さんに直接関わるわけではないので、粘膜曝露のリスクを認識しにくいという部分があります。粘膜は防護しなければ守ることができません。特に眼は危険なため、業務中の体液飛散リスクについては実地で繰り返し教育する必要がありますね。
八幡 血液・体液曝露に関する報告数をエピネット日本版で確認すると、やはりA「針刺し・切創」の報告数が多いのですが、最近はB「皮膚・粘膜汚染」の報告も増加傾向にあり、現場でも少しずつ眼への曝露に対する認識が高まってきているように感じます。こうした意識が防護具着用の遵守率向上につながってほしいと思います。
小田 中央材料室の業務は、使用済みの汚染器械をラックからワイヤーシェルフに入れ替えたり、ワイヤーシェルフをWDに載せたりする重労働です。そのためPPEを装着して1時間ほど作業していると、かなり汗をかくためゴーグルは曇り、作業効率が下がります。アイガードは通気性も良く曇りにくいため、作業者への負担も軽減されます。滅菌センターでは基本的にサージカルマスクを着用しているので、作業場にアイガードを設置しておくことで(図2)、手軽に取り出してマスクにパッと付けて作業を始められますし、使用後はそのまま廃棄できるという使い勝手のよさから採用しました。
廣幸 リユースのゴーグルは、使用後は持ち歩いたり、ポケットに入れたり、頭にかけたりと、取り扱いに現場も混乱していました。アイガードなら必要な場面で手軽に使え、使用後には廃棄しやすいという簡便性が現場には大変ありがたく、着用の遵守率を押し上げているのではないかと思います。
小田 中央材料室では外部委託職員にも装着感が良いと好評のため、ほぼ100%の遵守率になっています。
八幡 病棟などでは、吸引や洗浄作業に比べて、尿の廃棄作業などでのゴーグル着用遵守率はかなり低い状況でした。しかし、アイガードによって遵守率は上がってきたように感じています。もちろんゴーグルにも利点があるので、必要に応じて使い分ければ良いと思っています。
小田 あまりにも高価であれば論外ですが、コストについては、やはり効果とのマッチングを考慮した上で、どこに重要性を求め、適正化を図るかということが非常に大事だと思っています。
八幡 遵守率が上がれば消費量も増えコストはかさみます。しかし、必要な場面で防護具を適切に使えば、自分の身を守ることができますから、曝露後の対応に追われることもなくなります。それによって職員は安全に働くことができ、結果的に病院の利益にもつながるのではないでしょうか。
廣幸 そうですね。防護具をしっかり整備しようとすれば、それだけお金はかかりますが、職員の安全のために必要であれば、組織として取り組むべきですし、またコストをかけた以上は、遵守率が上がるように繰り返し職員に教育をしていくことが大切だと思います。
八幡 中材業務は外部委託職員が多いので感染制御部との連携が円滑に進まないこともあるかと思います。しかし、感染管理の立場としては院内の全職員を感染から守る役割がありますから、職員が安全に業務に専念できる環境づくりのために部門間の風通しを良くして連携していくように常に心がけています。
小田 外部委託職員は、病院という現場で経験を積み重ね、エキスパートになっていきます。したがって、粘膜曝露のリスクについては最初の段階でしっかり指導しておく必要があり、その上で正しい知識を積み上げてもらえるよう積極的に働きかけていきたいと思っています。
廣幸 粘膜曝露は思いがけないところで起こっているという認識を常に持っていただきたいですね。予防に勝るものはありませんから、曝露の危険性をしっかりと理解して防止に努めていただきたいと思います。