ウインドウフィルムを貼ると「無窓階判定」される?

ウインドウフィルムを貼ると「無窓階判定」される?

火災の発生時は、消火とともに、建物内にいる人の避難・救出が最重要課題となります。その際に重要な存在が、人が通ることができる大きさのある「窓」です。窓を開け、あるいは壊して、救助活動や避難の経路を確保することで、火災による被害を小さくすることができます。

そこで消防法では、建物の地上階のうち、避難上または消火活動上有効な開口部を有している階を「有窓階(普通階)」、有していない階を「無窓階」とし、それぞれに消防用設備の設置などに異なる義務規定を置いています。

この無窓階判定基準は、建物の窓にウインドウフィルムを貼る場合にも問題となります。設計士の方々からは「窓にフィルムを貼ることを検討しているが、無窓階判定を受けることになるのか?」という質問を多くいただいています。今回は、無窓階の定義、判定基準などから、この問題について考えていきましょう。


消防法による無窓階判定基準とは?

まず、消防法関連法令における無窓階の定義について、当社技術担当者に聞きました。

「無窓階の基準は、はしご車による救助が可能となる地上10階以下のフロアと、11階以上のフロアで大きな違いがあります。
10階以下の階では、直径1m以上の円が内接することができる開口部、または幅 0.75m以上・高さ 1.2m以上の開口部が、2ヵ所に満たない場合、また、その開口部が、その階の床面積の合計の 1/30を超えていない場合等の基準で、無窓階と判定されます。

また、開口部が床面から1.2m以内にあることや、道または道に通じる幅1m以上の通路、空地に面したものであることといった、開口部の構造に関する規定もあります。

そして、11階以上の場合、直径が50cm以上の円が内接できる開口部の面積の合計が、その階の床面積の1/30を超えていない階が、無窓階とされています」

無窓階と判定されるとどうなるのか?

無窓階として判定されたフロアは、消防用設備の設置義務が変わります。消防用設備には、主なものとして以下のものがあります。

  • 消火器具
  • 屋内消火栓設備
  • スプリンクラー設備
  • 排煙設備
  • 自動火災報知設備
  • 避難器具
  • 誘導灯
  • 非常警報設備

無窓階では、火災による被害が大きくなることを防ぐため、部屋の広さや形状、用途などによって定められるこれらの設備の設置義務などがより厳格になります。

フィルムによる強度アップで無窓階判定?

消防法により細かく規定される無窓階判定基準。それでは、窓にウインドウフィルムを貼ることは、この基準とどのように関わっているのでしょうか。

「無窓階判定基準で重要な概念となる『開口部』は、内部から容易に避難できる構造であり、かつ、外部から容易に開放し又は容易に破壊することにより進入できる構造であることが求められます。このことが、ガラスの強度を高めるウインドウフィルムを使用することによって無窓階に該当するのではないか、との懸念につながっています。

たとえば、防犯フィルムは外部から不審者の侵入を防ぐものですが、その効果が高ければ高いほど、消防隊員が救助活動を行う際の支障をきたす危険性があるということになります。ガラスの飛散防止や防犯等の観点から、建物の安全性を高めることを考える設計担当者の皆様にとって、ジレンマといえる部分でしょう」

具体的基準は都道府県ごとに定められる

実際に、ウィンドウフィルムを利用することで無窓階判定されることはあるのか、具体的な事例としてどのようなものが考えられるのか、ということについて聞きました。

「消防法に基づき無窓階判定基準の具体的な要件を決めているのは、都道府県ごとの消防本部です。各都道府県では判定のために、ガラスやフィルムの種類によって、救助活動にどのような影響を及ぼすのかを検査し、基準を細かく定めています。ウインドウフィルムを利用する際は、建物の所在地の管轄の消防本部がどのような基準を設置しているかを必ず調べる必要があります。

ウインドウフィルムについては、はめ殺し、屋内でのロック窓など窓の形状、ガラスの厚さ、救助活動を行うための足場の有無などによって、無窓階判定の対象となるか否かの扱いが異なっていますが、特に重要となるのがフィルムの材質と厚みです」

フィルムに関する基準 東京都の例

具体的なフィルムの厚みについては、どのような定めがあるのか、東京23区等を管轄区域とする東京消防庁の例を挙げて説明してもらいました。

「ウインドウフィルムで最も多く使われる材料であるポリエチレンテレフタラート(PET)では、多積層タイプのものを除き、基材の厚さが100µm以下である必要があります。ただし、100µmを超える厚さのフィルムであっても、即、無窓階判定がなされるわけではなく、場合によって基材の厚さが400µm以下のものであっても認められることがあります。

また、PETのほかにウインドウフィルムの材料として多く使われている塩化ビニルは、やわらかく、切れやすいものが多いため、基材の厚さが400µm以下のものとされています。なお、PET、塩化ビニルともに、内貼・外貼フィルムともに同じ基準となっています」

東京都には、基準策定のための検査を行う設備が充実していること、判定の対象となる建物が多いことなどから、多くの自治体の基準策定においても参考にされています。詳しくは、東京都消防庁から公表されている「無窓階の取り扱い」をご参照ください。 


無窓階判定を受けないためのフィルム選び

無窓階判定には、ウインドウフィルムの素材や厚さが大きく関連しているため、製品ごとの仕様を確認し、基準に見合った製品を選ぶことが大切です。そこで、東京都消防庁の基準を例にとり、当社製品で基準をクリアすることのできる製品について聞きました。

「当社の製品は、PET素材のものであれば、大部分の飛散防止フィルムは、厚さが50µmから100µmとなっていますので、基準をクリアすることができます。ただし、防犯性能等を高めたいくつかのフィルムは、厚さ100µmを超えますので、選択の際には必ず事前の確認をお願いします。また、多積層タイプのフィルムには異なる基準が使われていることにも注意が必要です」

「ウインドウフィルムの基材としてPETとともに多く使われ、無窓階判定の基準も設けられる塩化ビニルも、店舗の窓の広告、コマーシャル用途に多く使われる厚手のもので、200µmから400µmのものがほとんどです。東京都の基準に照らし合わせると、大概の製品は厚さに関する基準をクリアすることが可能となっています」

都道府県の基準をチェックし適切に選択を

無窓階判定の可能性のあるフロアでウインドウフィルムを利用する場合、事前に都道府県別に設定される基準を調査し、基準に適合する製品を選ぶことが最も重要なことです。各都道府県の無窓階判定基準は、冊子やWEBで公開されていますので、確認しておくことをお勧めします。

また当社では、お客様の建物の状況に合わせて、材料や厚さなどの観点から無窓階判定基準に適合する製品の提案をさせていただいております。多くの製品ラインナップの中から、最適な製品が見つかるようサポートさせていただきますので、ご検討の際はぜひお問い合わせください。