岐阜大学医学部附属病院
副病院長/
生体支援センター長/教授
村上 啓雄 先生
同附属病院
光学医療診療部
看護師長
森川 秀美 先生
同附属病院
感染管理認定看護師
土屋 麻由美 先生
村上 体液飛散のリスク認識は、個人防護具(PPE)の装着率に反映されます。以前、当院 光学医療診療部の全スタッフを対象にPPEの装着率を調べたことがありますが、マスク、エプロン、アイガードの順で装着率は低くなっており、眼の防護に対する認識が他の部位に比べて低いことがわかりました(図1)。この結果から眼への体液飛散リスクの認識をもっと上げていく必要があると思っています。
村上 洗浄作業のみならず鉗子関連介助やそれ以外の介助においてもスタッフが気づけないレベルでゴーグルが汚染されているという実態を見て取ることができますね。このようにデータとして示されると、内視鏡業務全般におけるゴーグルの汚染を痛感します。こうしたインパクトのある報告は現場に対して説得力がありますから、当院でもポスターなどを通じて啓発していきたいと思います。
図1 岐阜大学医学部附属病院 光学医療診療部
対象者別PPE装着率
図2 内視鏡室業務における汚染飛散物の状況
(坂本理美、原田直彦ほか:内視鏡業務における眼部汚染調査.臨床と研究 92(7):933-936.2015)
森川 光学医療診療部では、検査・治療の施行・介助の際や、使用後のファイバーの洗浄・消毒といった一連の作業において必ず眼を保護するよう指導を徹底しています。医師、看護師のみならず臨床工学技士や器具の洗浄を外部委託している業者(洗浄員)も指導の対象です。
土屋 ICTとしては月1回発行する「生体支援センターニュース」の中で職種別にエピネットの集計結果を掲載し、「粘膜曝露事例が多く発生しているので、しっかり防護をしましょう!」とスタッフに呼びかけています。
村上 そうですね。当院の眼の防護に対する取り組みについては、ここ十数年の間、エピネットの事例を分析しながら「こうしたら防げたのでは」という視点で注意深くみつめ、次にどう生かすかということを積み重ねて今日まで来ています。
土屋 まずゴーグルを装着しない理由について聞き取り調査を行いました。その結果、すぐ手が届く位置にない、耳が痛い、曇るといった理由が多くあがり、何か解決策はないかと模索していた時にアイガードの存在を知りました。まずは試用し、スタッフに使用具合のアンケート調査をすることにしました。その結果、手軽で使いやすいなど好評だったので、部署限定で正式に導入し、2年が経過しています。
森川 そもそも医療従事者のマスク着用率は高いので、必要時にシールドだけ着脱できるアイガードは使い勝手がよいですね。現在、光学医療診療部ではすべての検査室にマスクとアイガードを設置して、マスク着用にあわせてアイガードもセットで着用するよう指導しています(図3)。
土屋 手袋、ガウン、マスクに比べて、ゴーグルの装着率が低い傾向にあるのは、聞き取り調査であがっていた使用上の問題点に加えて、ゴーグルを着ける習慣が身についていないことが考えられます。その意味ではアイガードのような適宜マスクにつけて使用できるシールドをマスクとセットで設置しておけば、装着が習慣化されると思います。
村上 同感です。たとえば採血の時、以前は素手で行っていましたが、今や自然に手袋を装着しています。そういう意味では個人防護具を当たり前のように装着する文化は徐々に根づきつつあるわけです。アイガードのような使い勝手のよい防護具が出てきたことで装着文化はいよいよ最終段階に入ったと言えるのではないでしょうか。今後、着用の遵守率を押し上げていくことが期待されます
森川 患者さんに安心して検査を受けていただくためには、やはりそこで働く職員が健全でなくてはなりません。私は光学医療診療部の看護師長として、職員が安全に仕事をするために必要な方策には労を惜しまず取り組んでいくことが大切だと思っています。
土屋 私は感染対策の立場から、患者さんを守り、職員を守るという視点で考えていますが、職員一人ひとりがもっと自らを守るという意識をもってもらえるように働きかけていきたいですね。
村上 内視鏡業務には目に見えない体液飛散があり、眼への曝露リスクがいかに高いかという実態をしっかり認識することが必要ですね。防護具の遵守率については、おそらく数年単位のスパンで見ていけば徐々に上がってくるでしょう。ただ、その間に、手を替え品を替えて様々な取り組みを実施していく必要があります。そういう日々の積み重ねがあって初めて遵守率の向上につながるのであり、ひいては職員を守るという医療安全に直結するものと考えます。