テープやドレッシング材などの粘着製品を使用し、剥がすときに皮膚がめくれてしまった・赤くなって痛みを感じたという患者様の例は、経験があるのではないでしょうか。粘着製品による皮膚トラブルは、どのような患者にも起こりうる合併症です。重篤化して追加治療を必要としたり、QOL向上に支障をきたす場合もあります。
粘着製品による皮膚トラブルを低減するには、
1)患者のリスクアセスメントを行う
2)粘着製品の特徴を理解して、用途に応じた製品を選択する
3)スタッフへの継続的な院内教育・情報提供を行う
が大切です。
皮膚トラブルの一つであるスキン-テアについては、テープ剥離時が最も多いと報告されており、施設によっては医療安全の観点からインシデントとして報告しているところもあり、粘着製品による皮膚トラブルへの関心や対応の重要性は日本でも高まってきているといえます。
状況 | 部位数 | % |
テープ剥離時 | 162 | 17.5 |
転倒した | 109 | 11.8 |
ベッド柵にぶつけた | 92 | 9.9 |
車椅子移動介助時の摩擦・ずれ | 43 | 4.6 |
入浴・清拭等の清潔ケア時の摩擦・ずれ | 38 | 4.1 |
スキン-テア発生時の状況)(N=925)より上位5項目を抜粋
ベストプラクティス スキン-テア(皮膚裂傷)の予防と管理より(一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会)
※一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会,ベストプラクティス スキン-テア(皮膚裂傷)の予防と管理(2015)より引用
医療用テープやドレッシング材など様々な種類の粘着製品がありますが、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。皮膚に直接触れる“粘着剤”に着目してみましょう。
種類 | 長所 | 短所 | その他 |
アクリル系 | 保持力が高くずれにくい。 角質剥離が少ないタイプもある。 |
貼付直後は粘着が弱い。 一部の素材に粘着しにくい。 |
製造法により溶剤系。エマルジョン系、ホットメルト系などと表記することがある。 |
ゴム系 | 貼付直後から良く粘着する。 | 保持力が弱く、ずれやすい。 糊残りしやすい。 浸透性が低く蒸れやすい。 時間が経つと劣化しやすい。 |
天然ゴムラテックス由来の場合はアレルギー反応を起こす可能性がある。 |
シリコーン系 | 貼付直後から良く粘着する。 どの素材にも安定して粘着する。 角質剥離が少ない。 |
保持力が弱く、ずれやすい。 比較的高価。 |
|
ウレタン系 | 保持力が高くずれにくい。 角質剥離が少ないタイプもある。 |
貼付直後は粘着が弱い。 一部の素材に粘着しにくい。 |
粘着力と接触時間との関係
テープを皮膚に貼付した直後の粘着力は弱く、粘着剤が皮膚の凹凸になじむように濡れ広がり、接触面積が増加していくにつれて粘着力も上昇します。更に時間が経過すると、皮膚の代謝や発汗などによって粘着力は低下していき、剥がれやすくなっていきます。
粘着剤を貼った直後は、皮膚の微妙な凹凸の高い部分に粘着しています。
粘着剤が皮膚の凹凸に馴染むように濡れ広がり、接触面積が増加していくにつれて、粘着力も上昇します。
さらに時間が経過すると、粘着力は、皮膚の代謝や発汗などによって低下していき、剥がれやすくなっていきます。
粘着力と表面の粗さとの関係
テープを貼る対象物(皮膚やチューブなど)の表面の粗さによって、同じテープでも貼った直後の粘着力が異なります。表面が滑らかであれば粘着剤が濡れ広がるのが早く、粘着力が強くなる一方で、表面が粗いと、濡れ広がりが遅くなります。高齢者の場合、皮膚の表面が粗い場合が多いので、特にしっかり押さえて圧着すると剥がれにくくなります。
初期のぬれ広がりが早い。
初期のぬれ広がりが遅い。
<イメージ図>
● ガーゼ等のドレッシング材固定の用途で、皮膚が脆弱な場合は、「3M™ マイクロポア™ S やさしくはがせるシリコーンテープ 」がおすすめです。
● チューブやドレーン等の固定用途で、粘着力が強いテープを使用する場合は、スキンケア製品と併用しましょう。
シワが入らないように、伸ばさずにはります。皮膚やチューブに指の腹で優しく圧着します。
あらかじめテープを適切な長さにカットし、中央部からテープを引っ張らずに貼ります。
臨床上必要な場合以外はテープを引っ張らずに貼ってください。
同じ部位に繰り返し貼り剥がしする場合は、テープの下地としてあらかじめ皮膚剤を塗布しておきます。
テープを約180°に折り返します。
皮膚が持ち上がらないように手で押さえながら、ゆっくりと剥がします。
より優しく剥がすためには、剥離剤を皮膚と粘着剤の隙間に染み込ませるように使用して、テープを折り返しながら剥がします。
伸縮テープは伸ばして貼付すると、皮膚に緊張がかかりかぶれやすくなります。皮膚への負担の少ない方法で貼り剥がししましょう。
再生時間:50秒
3M™ マルチポア™ 高通気性撥水テープ EXを使用した固定方法です。皮膚に貼る部分は伸ばさずにやさしく固定しましょう。
再生時間:1分32秒
気管内チューブ、中心静脈カテーテル、対極板、サージカルドレープの使用に際して、剥離剤と皮膜剤のどちらを使用するとよいか、使い分けの目安を解説します。また、皮膚や各種チューブへの糊残りがあった場合の、剥離剤を使用した除去方法も紹介しています。
再生時間:4分36秒
看護手順の標準化には、知識の標準化が必要です。そのためには、スタッフへの継続的な教育が欠かせません。3Mでは、院内教育・勉強会などでお使いいただける動画資料をご用意しております。
※以下のコンテンツをご希望の方は、弊社営業担当者へのお問い合わせ、または、こちらのサンプル・資料請求フォームよりご請求ください。
医療安全の徹底が重要視される昨今、「摩擦・ずれによって、皮膚が裂けて生じる真皮深層までの損傷(スキン-テア)」に注目が集まっています。サージカルテープの剥離時の表皮剥離対策の一つとして、シリコーンテープを使用する対象患者と使用法を標準化し運用を開始した、昭和大学江東豊洲病院の取り組み事例を紹介します。
スキン-テア対策の一つのポイントが医療用テープによる予防・管理などのケアです。スタッフおよび患者教育などについて、お話を伺いました。