前回、自動車に隠れている3Mの技術として「3M™ アクリルフォームテープ」をご紹介しました。(まだご覧になっていない方は、ページ右側のバックナンバーからご覧いただけますので、是非見てみてくださいね)
実は自動車にはまだまだ多くの技術や製品が隠れていて、すべては紹介しきれないのですが、今回は後編として「車のエンジン音や走行音を吸収して静かな車を実現するのに役立っている製品」の秘密をお見せしようと思います。
エンジン音やタイヤの走行音などを吸収するのに使われているのが、「3M™ シンサレート™ 吸音断熱材」です。
自動車に採用される前は、衣料用断熱素材として1979年に発売された「3M™ シンサレート™ 高機能中綿素材」という製品でした。“薄くて、あたたかい”特徴をもち、ウィンターアパレルやスキーウェア・スノーグローブ、寝具などに採用され、1995年には自動車の吸音・断熱にも使われるようになりました。
「3M™ シンサレート™ 吸音断熱材」とは、繊維径が数µm(マイクロメートル)のマイクロファイバーと、繊維径が20~30µmのステープルファイバーを特殊製法でハイブリッド化した不織布素材です。軽量ながらも高い繊維密度をもち、嵩高く、高い吸音性・断熱性を持ちます。
軽くてふわふわしたこの素材が、どのように吸音してくれるのでしょうか。音は空気の振動によるものなのですが、この素材の中に保持された空気の層が、音の一部のエネルギーを熱エネルギーに変換し、音を弱くします。音が通り抜けようとしたら、空気の層に捕まって足止めされるようなイメージです。また、絡まりあった繊維が音によって振動し、その振動が繊維同士の摩擦によって熱エネルギーに変換されます。
ダッシュボードの裏側やエンジンアンダーカバーの裏側でエンジン音を吸音するだけではなく、屋根部分やタイヤの近く、ドア付近など、音が出る場所の近くに隠れているようです。
この素材を医療の現場に展開してみてはどうだろうか?と3Mの技術者は考えました。
そこで2016年に発売されたのが、「3M™ かけるだけであったかい保温ブランケット」です。本品は、2017年のグッドデザイン賞も受賞し、医療現場のみならず、暮らしや社会にとっても課題解決を実現するデザインと評価されています。
医療の現場で、「断熱」つまり「熱が逃げないように保温したい場面」とはどのような時でしょうか。「3M™ ベアーハガー™ ペーシェントウォーミング」を販売している3Mが着目したのは、手術を受ける患者の体温管理です。「シンサレート™ 高機能中綿素材」を使って、手術患者の体表面から熱放散を抑え体温を保つ、手術時用の保温ブランケットを開発しました。
手術を受ける患者は、緊張感や薄い患者着のために寒さを感じやすく、さらに麻酔導入によって体温は失われます。通常はタオルケットやバスタオルなどで肌の露出を抑える対策が行われますが、それらは保温性に乏しいという事実がありました。「3M™ かけるだけであったかい保温ブランケット」は、その製品名の通り、軽量で薄いのに高い保温性があります。大量のデッドエア(動かない空気)を封じ込めることのできるこの素材の特徴をうまく活用したことで、すぐれた保温性能が実現されました。
5万5,000種類を超える3Mの製品群。その圧倒的な製品開発力を支えているのが、「テクノロジープラットフォーム」と呼ぶ、汎用性の高い46の技術基盤です。
自動車を支えるテクノロジーは、「不織布」「音響制御」です。
3M™ シンサレート™ 高機能中綿素材を使用した、軽量でコンパクトなディスポーザブルの保温ブランケットです。術前・術中・術後の患者様の身体にかけ、露出部を覆うことによって熱損失を防止し、保温します。軽量で高い保温性を持ち、また、表面に施したラミネート加工により、手術部位感染の原因につながるほこり・塵の発生を抑制する低リント製品です。